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「紫で合いそうな色味と大きさのはこれ。それぞれちょっと柄が違うから選んで」
「柄?」
柄とかあんのか。1つずつ手に取って見てみるけど、わからん。同じに見える。
「わかんないっすよ。お任せします」
「そう?」
「あ、でも写真撮った時にはっきりわかるようなのありますか?」
どうせカラコン入れるなら、入れてんのわかんないと損な気がする。
「だよね。それだと、これがいいかな」
メイクさんが指したそれは、確かに他の物と比べると紫色の範囲が大きいし、色が鮮やかだ。
「じゃ、それで」
メイクさんは小さな瓶を器用に開けて、中からカラコンを取り出す。
「はい、じゃあまっすぐ前見てて」
瞼を上下に引かれ、目玉にひやっとしたものが乗るのがわかる。やっぱりこの瞬間が苦手だな。気持ち悪い。
両目にカラコンを入れられて、瞬きを2、3回するとすぐに落ち着く。
「あとはネイルだね」
マニキュアを一つ取り出すと、メイクさんはアシスタントさんにそれを任せて、ヘアセットが終わった礼華のところへ行ってしまった。
俺は大人しく爪を塗られながら、改めて鏡を見る。ほんと、カラコン入れると一気に雰囲気変わる気がするよな。国籍不明って感じだ。
さっきの段階でも宵闇は満足そうに見えたけど、完成品はどうだろう。ベルノワールプロデューサーとしての感想が聞きたい。
別に、個人的に「可愛い」とか「綺麗」とか言われてぇわけじゃない。
まあ、あいつは平気で「綺麗だな」とか言うと思うけど。
手を取られてて動けないから、首だけきょろきょろして宵闇を探す。でも、いつの間にかまた出て行ってしまったみたいだ。
ちぇ、つまらん。忙しいんだな。
「夕さん、綺麗!」
爪が乾いたのか、綺悧がやって来て隣の椅子に座る。にこにこしてて機嫌良さそうだ。うんうん、今日も可愛いな。
「いいなぁ、夕さんくらい美人だったら良かったなあ、俺」
「綺悧も充分可愛いぞ?」
落ち着いて考えて、何だこの会話。女子校か。OLか。
綺悧のくりっとした丸っこい目を生かす、タレ目気味のアイメイク。ふわふわの青い髪に青い口紅。青いカラコンは普段から使ってる。
「いつカッコいいって言ってもらえるようになるかなぁ」
そう言いながらも、別にそう大した不満はない様子であははと明るく笑う。
「はい、夕さん出来ました」
アシスタントさんが爪が乾いたのを確認して、そう教えてくれる。
「ありがとうございます」
綺麗に塗られたマニキュアは、紫色の中に、虹色がちらちら光る。こういうの何て言うんだろう。ていうか、ここまで写真に写らねぇよなぁ。
立ち上がってメイク室を見回すけど。やっぱり宵闇いねぇな。あと、朱雨もいねぇわ。礼華はメイク中。





