24-1
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目が覚めたら、朝になってた。めちゃめちゃ外明るいな。
あれから、宵闇ととりとめのない話をしてるうちに、そのまま寝ちまったんだな。布団あったかかったし。隣でヤツはすやすや寝てやがる。
やべぇ、俺ら風呂も入ってないし、着替えてもないわ。
まあいいか。
まだもうちょい眠いな。今日は久し振りに予定ないし、のんびりすっか。こいつは暇なのかな。こいつのスケジュールまでは知らねぇけど、少なくともレコーディング開始以降はぶっ通しで仕事してるはずだ。一ヶ月近く。寝かせといてやろう。
目の前にある、宵闇の顔を何となしに眺める。ほんと、穏やかな寝顔だな。ちょっと幸せそうだ。普段しんどいんだから、寝てる時くらいこれくらい安らかだと安心するわ。
考えてみたら、俺もその間に2日くらいしか休んでねぇな。こいつ起きたら聞いてみて、何もなかったらこのままダラダラしよう。休養日もとらないと、どっか傷めるし。故障だけは避けたい。俺、死ぬ一秒前までドラム叩きたいからさ。
しかし、綺麗な寝顔だな。やっぱ美形だわ。多分、ベルノワールで一番美形なんじゃねぇか? 普段前髪で顔殆ど見えてねぇし、派手さはないソリッドな感じだから、あんま注目されないかもしんねぇけど。
宵闇の顔にかかってる前髪に、指を伸ばしてかきあげる。
この方がいいのにな。でも、ミステリアスな感じがなくなるから、「ベルノワールの宵闇」としてはアウトか。
宵闇って名前もなかなか厨二病だよな。冷静に考えるとかなり恥ずかしいわ。
だし、素のこいつには全然闇がないんだ。俺のがよっぽど腹黒い。こいつもヴィジュアル系に出会わなきゃ、今頃は爽やかな好青年って感じで生きてたのかもしれないな。
でも、出会っちまったもんは、出会っちまったんだ。
俺はガキの頃にヘヴィメタルに出会っちまったし、こいつはヴィジュアル系に出会っちまった。
らしくねぇかもしれないけど、それって運命だよな。俺は、ヘヴィメタルに人生を持ってかれた。もしかしたら、って仮定の話は出来る。いい大学行ってたから、きちんと就職活動してたら、結構いい会社入れた可能性は高いし、教職とってるから、教師になってたかもしれない。そんで、そのまま普通の人生ってヤツを歩んでたりする俺がいたかもな。そんなもしもの結果は誰にもわからない。ただ、就職しないでドラムに人生賭けるって決めた俺がいるっていう、単純にそれだけが現実だ。
俺はそれを何一つ後悔してないし、何なら自分を褒めてやりたい。この選択は間違ってなかったって。
プロになって、好きなことを仕事にしちまって、苦しくないかって聞かれれば、俺は苦しくないんだよな。
好きなことを仕事にしてて、キツいこともあるよ。悪戦苦闘する現場だってある。でも俺は、それを上回るくらいにドラムが好きだし、音楽が好きだ。どんなに苦労しても、全部面白い。
こいつもそうなのかな。
きっと、ヴィジュアル系に出会うまでは、人当たりが良くて優しくてにこやかな須藤くんだったんだろう。ヴィジュアル系に出会わなかったら、当たり前の道を当たり前に進んで、それなりに職場の人気者だったりしたかもな。
だけどこいつはヴィジュアル系に出会って、ベースを持って、クールな宵闇になることを選んだ。
こいつも後悔なんかしてないはずだ。だってそんなもん、いつだって辞められる。その気になれば、すぐに穏やかな須藤くんに戻れる。それをしないでここまで一人で踏ん張って来てるってことは、こいつにもこの人生をやり遂げる覚悟があるってことだ。
多分、宵闇は伝説のリーダーになるよ。こいつは絶対にこのキャラを壊さないんだろう。このまま、いつか引退する日まで「宵闇」のイメージを守り続ける。
カッコいいじゃん。
そっと頭を撫でてやる。
その覚悟、マジで男前だよ。





