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Hate or Fate?  作者: たきかわ由里
91/232

23-5

「夕も増えてきただろ、リプ」

「あー、ぼちぼちな。でもまだライブもやってねぇし、お前の一万分の一だわ」

「いや、俺のフォロワー一万人もいないから」

 確かに、ちょっとずつフォロワーもリプも増えてる。俺の「夕」としての露出なんか、まだオフィシャルサイトの写真と、紹介の短い動画だけなのに。中には、ディスコードで俺を知っててくれた人がフォローしてくれたパターンも少ないながらもあるけど。これは主に、リュウトくんのリツイートのお陰だ。

 画面上の時計を見ると、2分前だ。

「お、そろそろだな」

 テーブルの上のノートパソコンを覗く。ノートパソコンの時計も同じ。俺は空いたビールの缶を置いて、ちょうど灰になったタバコを消す。

「あれ、編集したのか? 30分ちょいオーバーしたけど」

「ちょっとだから、編集しなかったよ。別に切るほどのとこなかったし」

「そっか」

「オープニングSEつけて、大体35分」

「いつもそんな感じなのか?」

「ああ。30分前後って感じで、結構適当だよ」

 それがウェブラジオのいいところだよな。ちゃんとしたラジオ放送だったらどうにか切らなきゃなんないとこだ。

 ちょっとでも長きゃ、ファンも喜んでくれるんだろうし。

 手の中のスマホが震える。

 見ると、俺のツイートにリプライが付いてる。「夕くんのトーク楽しみです! 0時ちょうどに聞きます!」ってか。ほんとに、ありがたいな、ファンって。まだ何者かわからん俺にも、こんなこと言ってくれるんだから。

「ありがとう。俺も今から聞くよ!」って返す。まだリプライ少ないから、今のうちだけでもと思ってなるべく返してる。出来れば、これから先も返して行きたい。俺もバンドやってたわけだから、ファンのありがたさは身に染みてる。

「夕、0時だ」

「あいよ」

 宵闇、何かめっちゃワクワクしてんな。お前、一緒に収録してたじゃねぇか。

 更新ボタンをクリックすると、What's newに「Belle Noir CAST更新しました」のお知らせが出る。トップページに埋め込まれた再生ボタンを押すと、SEが流れ始めた。

 せーの、こんばんは! からスタートする。綺悧が今回の内容をかいつまんで紹介する。それから、すぐに俺が加入した話題に移る。

「ということで、今月加入した夕さんです!」という綺悧の元気な声に続いて、俺の「はじめまして、ドラムの夕です」っていう、どこにテンション持ってけばいのかわからないままの微妙な名乗り。

「やべ、俺、こんな声なのか」

「ん? こんな声だよ?」

 自分の声って気持ち悪いな。初めて聞いたわ。

「変な声だな」

「そんなことないぞ?」

 宵闇はちょっと笑ってる。お前はもう慣れてるだろうけどさ。

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