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「一緒に聞こう」
宵闇の誘い。いや別に一緒に聞かなくてもいいし、この先一ヶ月普通にオンラインで聞けるんだけど。
でもまあ、一緒にツッコミ入れながら聞くのも楽しいか。
「あと10分で俺んちなら着くけど…寄ってくか?」
車の中で聞いてもいいけど、何ならビールでも呑みながら聞きたいしな。そう思って誘うと、宵闇は頷く。
「そうしよう」
こいつも俺んちに上がるのに遠慮ねぇな。俺も今後、こいつの家に上がるのに遠慮する気ねぇけど。駅近いし。
ちょうど高速を降りて、一般道に入る。
ここからうちはすぐだ。
駐車場に車を停めて、早足で家に帰り着く。今晩は冷えるな。まだ毛布も冬物の部屋着も出してねぇや。
「お邪魔しまーす」
宵闇は一応って感じでそう言いながら俺の後に着いて上がってきた。
すぐにノートパソコンを立ち上げる。ブラウザでオフィシャルサイトにアクセスする。まだ更新まで15分くらいあるな。
俺は冷蔵庫からビールを取って、タバコをくわえる。
宵闇はベッドに腰掛けて、スマホをチェックし始めた。
「夕、ツイッターに更新の告知入れろよ」
「あー、忘れったわ。はいはい」
俺もスマホを出して宵闇の隣に座り、ツイッターを開く。お、宵闇もう投稿したな。これの引用リツイートでいいか。「もうすぐ更新! 俺初登場!」だけコメントを添えて投稿する。
「おい、夕、手抜きだな」
宵闇は自分のスマホでそれを見てツッコんで来る。
「いいじゃねぇか、わかれば」
「お前らしいっちゃお前らしいよなぁ」
ヤツは声を立てて笑う。だろ?
喉が乾いてたから、ビールはどんどん減ってく。
「お前も何か飲むか?」
「ビール以外に何がある?」
「麦茶か水道水」
「麦茶一択だろそれ」
「はいよ」
立って行って、グラスに麦茶を入れて戻って来る。ベッドの前のテーブルにそれを置いてやる。ヤツはまだツイッターを見てる。横から覗き込むと、たまってるファンからのリプライを読んでた。
こういうの見ると、宵闇ってファンにとってもカリスマなんだなって思い知る。宵闇様、なんて呼び掛けも珍しくない。
この表の顔を保つのも、簡単じゃないよな。オンオフの落差を知ってるだけに、こいつの努力はすげぇなって思う。これを、ディエス・イレの頃からだから…多分、10年とか続けてるんだろ。化けの皮が剥がれてないってことは、人目につくところでは宵闇様のまんまなわけだ。東京来てからはまだしも、名古屋にいた頃にそれを貫くのは相当しんどかっただろう。
「やっぱお前、リプ多いな」
「なかなか返せないけどな。ありがたいよ。俺の何でもないツイートに、頭使ってリプくれるんだから」
宵闇様の中の人は、謙虚な常識人なんだよなぁ。根っこにこの意識があるから、どんなに天上人ぶっても、ファンが着いてくるんだな。





