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Hate or Fate?  作者: たきかわ由里
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23-3


「そういえば、朱雨のピッキング安定してきたな!」

「ん? ああ、そうだな。あいつも随分練習して来たみたいだよな」

 よーし、路線変更完了。このまま続けよう。

「アップダウンがかなり揃ってきたし、あれならソロとかリフなんかも密度上げられるんじゃねぇ?」

「ああ。あの調子なら、音数増えても着いてこられるようになるんじゃないかな」

「ソロのクオリティ上げたいしな。もっとたくさん音楽聴かせて、引き出し増やさねぇと」

「なるほど。あいつ、好きなバンドしか聴かないから」

 だから、フレーズのストックが少なくてどれも同じに聴こえるんだな。やっぱインプットは大事だよ。

 昨日、朱雨にも長崎さんに師事出来るって話をしたら腰抜かしてた。いいリアクションだ。そこから、あいつのプレイはより気合いの入ったものになった。長崎さんに習うからには、それに相応しい努力をしないとな。

 長崎さんは多分、本物の天才だ。一緒にプレイしていてもそれは感じる。直感が凄い。決まりきったフレーズだけじゃなくて、観客の反応を見ながら、その場でプレイをどんどん変えていく。感情をそのままギターに乗せられる人だ。お決まりのフレーズには全く縛られない。かと言って他のパートを置き去りにすることはなくて、バンドとして成立するラインはきっちり守る。あんなことが出来る人は滅多にいない。

 そんな天才なんだけど、ものすごく練習が好きだ。恐らく俺以上に。練習が好きっていうか、ギターが人生そのものなんだろう。触らない日は殆どないって言う。

 天才が練習してんだから、礼華や朱雨含めて、俺ら凡人が練習しないって選択肢はない。いい刺激になる。

 長崎さんのレッスンは、間違いなくうちのツインギターのレベルをハイスピードで引き上げるに違いない。

「長崎さんのレッスンが始まるのが楽しみだな。基礎力も上がるだろうし、長崎さんはめちゃくちゃ音楽知ってっから、勉強になる音源も教えてくれるだろうし」

「ほんとに、長崎さんには頭が上がらないな」

「繋いだ俺には?」

「夕にも頭上がらない」

 宵闇の笑い声。楽しそうだ。こいつが楽しそうにしてると、ちょっとほっとする。オンの緊張感ばっかりじゃ、息が詰まっちまうだろうからな。

 ちょっとでも素が出せる相手がいた方が、こいつも潰れずに済むだろ。俺も、こいつといるの楽しくなって来たし。

 いろんなことが、上手く調和してってる。俺は俺で、やりたいことをベルノワールに持ち込むことが出来てるし、好きなサポートやスタジオの仕事も続けられる。

 そして、この先ベルノワールは確実にヴィジュアル系に嵐を起こすに違いない。

 こんな面白いことはねぇよ。

 俺がニヤニヤしてると、宵闇がカーナビの画面を覗き込む。

「あ、もうあと30分ちょっとだな」

「うん?」

「0時まで」

「ああ…あ、そうか」

 そうだ、うっかりしてた。

「ベルノワールキャストの更新か」

「そう」

 ベルノワールキャスト、ってのがウェブラジオのタイトルだ。毎月20日の0時に更新される。

 今から更新される回が、一昨日録った俺の初出演回だ。

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