22-6
「そう、長崎芳之さん」
「えっ、夕、知り合い?」
そうなるよな。待望のオリジナルソロアルバムが出たり、自分のブランドのギターがリリースされたりで、今年は特に大注目だから。ギター雑誌やヘヴィメタル誌での扱いもかなり大きくなってる。
「バックバンドの仕事で一緒にやってんだ。後な、お前と朱雨のインストラクターは長崎さんになった」
「ええっ!?」
こんなデカい声出るんじゃん。驚きのあまりに固まってる。
宵闇もそれに気が付いて、ベースの音が止まった。一瞬にして静まるスタジオ。
「な、長崎さん、が? えっ?」
「詳しい話は後だ。俺、そこのマツキヨ行ってくっからな」
礼華の背中をばん、と叩いて、財布を取りにバッグのところへ戻る。すると、宵闇が近寄って来て小声で話しかけてくる。
「どうしたんだ?」
「礼華の左手、水膨れだらけ。今、長崎さんに対策聞いたからマツキヨ行ってくるわ。あと、長崎さんがあいつら教えてくれるって」
「長崎さん…まさか、長崎芳之さん?」
宵闇も驚いてる。こいつもちゃんと長崎さん知ってるんだな。
「また後で話すよ。とりま速攻で行ってくる」
俺が行こうとすると、宵闇が俺の肩をつかむ。
「待て」
「何だ?」
宵闇はすっと自分の荷物の所に行って、財布ごと俺に投げて寄越す。
「よろしく」
「ラジャー」
受け取った財布を持って、俺はスタジオを出た。





