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「めっちゃ練習しまくってんだな」
「ああ…うん。一応…」
「一応のレベルじゃねぇよ。何参考にしてやってんの?」
なかなか目は合わせてくれないんだよな。俺、別に噛みつかねぇのに。しょうがないか、人見知りだもんな。
「ネットで、ググって」
「なるほどな!」
その手があったか。便利な世の中だよな。
「すぐに取り掛れることって何だろうと思って…」
「そっか。お前ほんとすげぇわ」
指先に触ってみると、皮膚が固くなりかけてるところもある。これがきっちり固くなっちまえば、弾くのも楽になるだろう。そうなればもっと思い切りやれてぐっと良くなるはずだ。
「指、痛くねぇ?」
「痛いけど…我慢するしかないし」
「うーん、俺は対策知らねぇけど…待ってろ」
またライフライン活用しますか。テレフォンで。自分の荷物のところにスマホを取りに行き、スタジオを出ようと振り返ると、ベースを弾き続けてる宵闇と目が合った。こっそりウィンクしてやると、ヤツは小さく頷く。何か起きたって状況は理解してるだろう。
廊下に出て、電話をかける。
餅は餅屋。ギターはギタリスト。
あの人も忙しいから出てくれるかどうか。俺か礼華のどっちかは運を持ってると信じよう。
3コール目、繋がった。俺ら、持ってんな。
「長崎さんおつかれさまです。今いいですか?」
「珍しいねー優哉くん! どうしたの? いいよ? なにー?」
人懐っこい、明るい声。これが新世代のギターヒーローとして名高い長崎芳之さんだ。ちっとも偉ぶるところがなくて、誰にでも気さくに対応する、ややもすると子どもっぽくて無邪気な、俺から見ても可愛い人だ。
「うちのギタリスト…あ、俺、ベルノワール入ったんですけど」
「えー? ベルノワール? 聞いたことあるよ。何だっけ」
「今度、Monster's Foolish Night出させてもらいます」
「あっ! そうだ! それで聞いたことあるんだー! 優哉くんのバンドなの?」
「俺はこないだ入ったとこなんですけどね」
「そうなんだ! 楽しみだね。優哉くんと対バンするの初めてだもんね」
長崎さんは本当に楽しみそうに言ってくれる。
「で、うちのギタリストが指先に水膨れ作ってんですけど、何か対策あります?」
長崎さんは今更そんなもん作らないと思うけど、講師やってるから、そういう学生からの相談もあるだろう。
「うわー、あれ痛いよね! かわいそう」
「そうなんですよ。潰れてんのもあるんですけど」
「潰れちゃったんだ。えーとね、バンドエイドいいよ」
「え? バンドエイド?」
あまりにも直球の回答に俺は驚く。何の捻りもなかった。





