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「ほれ、イケメン帰って来い」
にっと笑ってやると、ヤツもつられて笑顔になる。
こいつが表でも、この顔でいられたらいいのにな。そうしたら、こいつも楽に生きられるだろう。でも、真顔でクールなリーダーをやりきると決めたのはこいつ自身だ。ベルノワールがどんな状況でもブレないバンドに成長したら、いつかこの笑顔を人に見せられる日が来るかもしれない。でも、もしかしたら、一生カリスマ性を保ったまま、この笑顔は隠して生きていくのかもしれない。そうなら、これはずっと俺しか知らない顔なんだな。
ちょっと特別感あるな。悪くない。
暫くそのままにこにこと見つめ合って、俺が手を離すとすうっと真顔に戻る。
その時、扉が急に開いた。
「夕さん、5分前…あ、宵闇さんもいたんですか」
開いた扉からひょこっと顔を覗かせた綺悧が、宵闇の顔を見て驚く。危ねぇ、ギリギリセーフだった。宵闇はちらっと横目で綺悧を見て、目を細める。
「ああ、戻ろう」
綺悧はにっこりと笑って頷く。宵闇はさっさと先に中に入って歩いて行く。俺もすぐにタバコを消して、綺悧と後を着いて行く。
「夕さん、何話してたの?」
綺悧の素朴な疑問。まだまだこいつにほんとのことを話すわけには行かねぇ。
「俺、ラジオとかで喋るの初めてだから、どんな感じなのか教えてもらってたんだよ。あと、撮影とかもさ、こないだのカメラテストが初めてだったから」
「ああ、そっかぁ。ラジオは俺が進行するから、合わせてくれたら大丈夫」
「頼りにしてるぜ、先輩」
綺悧の背中をぽん、と叩くと、声を立てて笑う。まだ全然子どもだな、こいつは。
「やだなぁ、先輩とか!」
「俺がベルノワールで一番後輩だぜ?」
「そうだけど、何か変ですよそれ!」
会議室の前まで来ると、綺悧は素早く宵闇の前にまわってドアを開けた。
どこまでも、宵闇は綺悧の神なんだな。





