21-6
吸殻を灰皿に放り込み、もう一本取り出す。
「その辺のことは、俺が下調べしとくし、心当たりのとこには打診しとく。お前は目の前のことに集中して、あいつらを引っ張っていけ」
宵闇は頷く。まだしゅんとしてんな。
手を伸ばして、ヤツのおでこをぺしっと叩く。
「ほれ、キリッとしろキリッと。男前はどこ行ったよ」
そう言ってやると、瞬きをして一度笑顔になり、それから顔を引き締める。ほら、クールで男前な宵闇の出来上がりだ。
「これ吸ったら会議室戻るから、お前先行ってろ」
タバコをくわえて吸い込むと、宵闇の指先がタバコに伸びて来た。そして、タバコをつまみ上げて、正面からすっと顔を寄せて来て呟く。
「ありがとう」
あまりの近距離に驚いてフリーズしていると、耳元に寄せられた唇が、更に小さな声で囁いた。
…小さ過ぎて聞こえねぇわ。
15年もドラム叩いてんだよ、こっちは。聴力的に言えば、あんまり耳は良くねぇ。
これ、ただの呼吸音だ。
「は? なに? 聞こえねぇ」
「えっ」
宵闇はすっと離れて、目を丸くする。何言ったかは大体予想がついてるんだけど、マジで聞こえないから。かなり思い切って言ったんだと思うけど、悪い。
「俺、耳あんまり良くねぇからさ」
「…あ、そう、なんだ…」
「タバコ返せよ」
「…はい」
持ってたタバコを素直に俺に差し出す。受け取って、もう一度くわえて吸い込む。ヤツはまた気が抜けた表情に戻ってる。せっかく男前に戻ったのにな。
「ラジオ何分っつったっけ?」
「30分だよ」
「ふーん。俺、どのタイミングで挨拶すんの」
「最初。始まってすぐに紹介するから、そのタイミングで」
「りょーかい。その後は?」
「ライブ告知とリリース告知。時間余ったらレコーディング裏話、って綺悧には言ってある」
「はいよ」
宵闇は肩を落として大きなため息をつく。笑っちゃ悪いんだろうけど…笑っちまうな。いや、俺だってからかうつもりじゃねぇんだけど。昨夜からずっとこの調子だもんな。
これを、どこまで運良くかわせるか。
でも、いずれどっかではっきりさせなきゃなんねぇんだろうな。
まあ、それまではこのまま行くか。
「ラジオは割とゆるい感じでやってるから。俺はあんまり喋らないけど」
「そうなんだ?」
「ダメならカットするから、お前は好きなように喋ってくれ」
「おう、よろしくな。じゃ、もう一回」
タバコをくわえて、両手で宵闇の頬を包む。





