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宵闇は多分、このマネージャーの反応に動揺してるに違いない。俺ごときが出したプランを、マネージャーは一切考えてなかったことには気付いただろうか。それに気付けば、今まで、事務所から具体的なプランが提示されなかったことにも思い至ったはずだ。4年目の今まで、ただ事務所に調子に乗せられて流されてたのは、ぼんやりしてた宵闇にも責任はある。だけど、ここからは俺がいるからな。事務所の好きにはさせない。ベルノワールはどんどん先手を打って仕掛けていってやる。
宵闇は、パン、と一つ手を打つ。
「とりあえず、直近の話に戻そう」
空気が切り替わる。夢が叶う方法を見せられた3人は、少し前のめりに宵闇の方を向き直る。いい姿勢だ。今はっきりと思い描いた夢を実現する為の、今から踏み出す一歩。それを聞き漏らすまいと、真剣な目で宵闇を見つめる。
「さっきも出たが、Monster's Foolish Night。主催はセルスクェア。あと出るのはゲイズとサンドリオンだ」
そうか、セルスクェアの主催だったのか。セルスクェアは長崎さんがいるバンドだ。ワンマンは何度か見に行ったことがある。ベテラン揃いでヴィジュアル系の枠を越えた、ヤバいくらいにカッコいいバンドだ。長崎さんと対バン出来るのは楽しみだな。
サンドリオンとゲイズは知らないけど、セルスクェアがセレクトしたバンドなら、間違いねぇんだろう。相手にとって不足なしだ。
「俺たちは、オープニングアクトってことで時間をもらった。後が霞むくらいに爪痕を残したい」
あのセルスクェアを霞ませるのは、現実的には今のベルノワールじゃ無理だってわかってる。トリのセルスクェアが終わったあとに「ベルノワールも良かったね」って記憶に残ってりゃ、それで今回は成功だ。
宵闇が、手元の紙をそれぞれに配る。
「セットリストはこれだ」
メールもらってたのは、俺だけだ。3人は今初めてこのセトリを見る。
「1曲目Exit。続けてClash Right。MC入れてTears for Fear、Hate or Fate。MC。そこからDie in Blood、ラストにIlluminati」
打ち合わせた通り。俺と宵闇の意見は食い違ったが、ここがベストな落とし所だろう。最初にぶちかまして、定番曲、新曲。最後は問答無用の暴れ曲をお見舞いする。
「オープニングアクトだから、アンコールはない。そこのところをきっちり踏まえて、6曲でベルノワールをパーフェクトに見せる」
全員が頷く。
「セットリストに関してはいいな?」
それぞれが口々にはい、と答える。
「それに備えてのリハーサルだが、今回が夕が加わる初めてのライブだ。レコーディングの状況も合わせて考えて、回数を増やした」
宵闇はもう一枚紙を配る。そこには、31日までの日付と時間がずらりと並ぶ。この期間は当初のリハーサル予定が4回だったところを7回まで増やした。
「都合が悪いヤツは?」
一人も手をあげない。全員参加だな。喜ばしい。がっつり練習しようや!
俺はスケジュールを見ながらワクワクして来る。こいつらと実際に合わせるのが楽しみになって来てる。そりゃ、礼華も朱雨も綺悧もまだまだレベルは低いけど、やる気になってるヤツとプレイするのは面白いよ。
7回のバトル。その中でこいつらを叩き上げてやる。どこまで叩き上げられるか、やってみようじゃねぇの。レコーディングであそこまで食らいついて来たんだ、期待は出来る。
「わかってると思うが、リハのOKラインも上げていく。気を抜くなよ」
宵闇、キマってんな。リーダーやってる時の顔は、ほんといい男だよ。綺悧が崇拝すんのもちょっとわかる。





