20-2
「大丈夫」
「水もらってもいいか?」
「入れて来てやるよ」
いや、お前の目、半分しか開いてないし。
「自分でやるから、お前もうちょっと寝とけよ」
「いや…」
両掌で両方の頬をパンっと叩き、宵闇は立ち上がる。
「お前こそ座ってろよ。水でいいのか? コーヒーとかお茶とか」
おっ、寝起きいいな。もういつも通りの顔に戻った。
「二日酔いだから、水がいい」
「頭痛いのか? 大丈夫か」
「ちょっと頭痛くて、胃がムカつくくらい。そんなひどくねぇけど」
俺がベッドに腰掛けて答えてる間に、宵闇は部屋の隅のウォーターサーバーで水を汲んで、グラスを持って来てくれる。
「サンキュ」
冷たいグラスの感触が気持ちいい。一口飲むと、一気にさっぱりした気分になる。二日酔いになる度に、酒は控えようと思うんだけどさ、なかなかそうもいかなくてな。
「何かいるか? 薬とか」
「あー、それはいらねぇ。水飲んで大人しくしてりゃ治る」
今日くらいの程度だったら、まああと一時間もじっとしてりゃ大丈夫だろう。今何時だ。時計を探すと、枕元に目覚まし時計がある。これもピカチュウじゃねぇか。9時か。ちょっとゆっくりさせてもらって、それから自分ちに一回帰ってシャワーと身支度して出れば、ミーティング開始に間に合う。
「朝飯食うか? 大したもんはないけど」
宵闇は、俺の頭を軽く撫でながら俺の顔を覗き込んで優しく聞いてくれる。
何かなー、これなんて言うのかなー。…こういうことされても、割と嫌じゃないんだよなぁ。
「いや、ちょっと無理だわ。ありがとな」
「そうか。じゃあ、水もう一杯入れてやるよ」
そう言って、俺の手から空になったグラスを取ってもう一度ウォーターサーバーに向かう。
宵闇も、部屋着はスウェットなんだなぁ。結構、普通…っていうか、そのグレーのスウェット、ワンピースじゃん。ピカチュウと言い、ワンピースと言い、趣味がちょっと子どもっぽい。面白ぇな。
「なぁ、お前ピカチュウ好きなのか?」
「ん? …ああ」
ピカチュウの大群に目をやってから、俺にグラスを手渡して照れくさそうに笑う。
「子どもっぽいかなと思ってるんだけど、やっぱ子どもの頃から集めてるのがやめらんなくて」
「めちゃめちゃやったもんなぁ、ポケモン」
「だろ?」
俺ら世代はガキの頃からポケモンで育ってるから、気持ちはわかる。
「俺も、リザードンとか見るとちょっと欲しくなるもんな」
「な? まあ、いい加減店で買うのは恥ずかしいから、今は通販ばっかりだけど」





