19-12
ちょこちょこ休憩時間で顔合わせたけど、殆ど直接話してないんだよな。話しかけても、秒で会話終わるし。全然会話になってないし。
「あいつなぁ。人見知りなんだよ」
「は?」
「めちゃくちゃ人見知り。慣れるまで時間かかるもんだと思って、待っててやってくれないか」
人見知りって。ファンサービスを重んじるヴィジュアル系がそこまで人見知りって、それ結構キツいんじゃねぇのか?
「そんな人見知りで、写メ会とか握手会とかどうしてんだ」
「そういう場面は切り替えがきくみたいだよ。ファンサービスの評判はいい」
「それも凄いな」
「人見知りな分、相手を気遣えるんだろうな。礼華は優しい、ってよく聞く」
「なるほど…」
それはそれで納得だ。じゃあ、嫌われてるわけじゃないらしいな。ただ、あんまりぐいぐい距離詰めるのは良くなさそうだ。聞いといて良かった。
そうか、チェキ会…握手会…。それ、俺もやるんだよな、そう言えば。
「チェキ会ってどんな感じなんだ」
握手会、サイン会は想像がつく。俺が本間さんにハマったのは、ガキの頃に行ったインストアイベントだった。親父もジャパメタが好きで、俺はメタルを聴いて育った。それでドラムに興味を持って、初めて接したドラマーが本間さんだ。あの時の大きな手は忘れない。
でも、チェキ会は経験がない。
「一人ずつ来てもらって、一緒にチェキ撮って、握手するって流れだよ」
「ふーん」
「それを…そうだな、一回2時間はかかるかな」
「は? 2時間!?」
「ああ。スムーズに行って、大体それくらい…いや、もうちょいかかるか」
2時間もチェキ撮って握手してチェキ撮って握手するわけか? マジか。
「そのチェキってどんな感じで撮るんだ?」
「よっぽど無茶じゃない限り、その子のリクエストで」
「無茶ってのは」
「キスしてくれとかお姫様抱っこしてくれとかはNG」
「だよな」
それはほんと勘弁して欲しい。常識的な範囲内ってことだな。
「ポーズお任せ、ならちょっと肩抱いてあげるとか。割とリクエストされるのはハートだって言ってたな、綺悧は」
知らん女の子の肩抱くのか。えらいこっちゃな。ホストだな、殆ど。
「すげぇな。で、ハートって何だ」
「こういう…」
宵闇は右手の親指を伸ばし、人差し指を半端に曲げる。残りの指は握り込む。
「お前はこれ、左手で作って」
「こうか?」
言われるまま、俺もそれを真似してみる。





