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Hate or Fate?  作者: たきかわ由里
65/232

19-10

「ほら」

 ほら? 何がほらだ。…って、この状態は。

「食えよ」

 あーんですか。あーんしてくれるって言うんですか、ベルノワールの宵闇様が。何のファン感謝祭なんだよ。しかも俺、ファンじゃねぇし。

 とは言っても、宵闇の表情はやたらと嬉しそうだし、箸はもう口のすぐそばだし、これはかなり拒否しにくい。

 …誰か見てるわけでもねぇしな…。

 俺が観念して口を開けると、秋刀魚が口の中に放り込まれる。

 最早、味がよくわからない。さっき一口食った時美味かったんだから、美味いんだと思う。思うけど、わからん。

 もぐもぐ咀嚼する俺の顔を、宵闇はにこにこと見ている。一瞬目が合ったけど、つい視線を逸らしてしまう。

「なあ、夕」

「…ん?」

 飲み込むタイミングを見失った秋刀魚を、それでも何とか飲み込む。

「好きな子とか狙ってる子いるのか?」

「修学旅行かよ」

 今回はどうにかツッコめた。修学旅行の就寝時間かよ。

「え?」

「この後枕投げでもすんのかよ」

「しないけど」

 何をきょとんとしてるんだこいつは。マジで言ってんのか。頭いてぇな。

「いません!」

「安心した」

 箸を置いた宵闇は、俺の方へ体ごと向き直る。いよいよか? いよいよ来るのか? どうしよう。来い、店員。俺の生中がまだだ。

 コツコツ、とノックの音。完全に盗聴してる上に俺の味方なんじゃねぇか?

「どうぞ!」

 勢いよく返事をすると、扉が開いて、生中がやって来る。ありがとう神様。俺もう絶対この店贔屓にする。設計ミスだけど。

 受け取った生中を、そのままごくごく飲む。どうにか一息ついた俺は、こっちから話を切り出す。

「そういや、Monster's Foolish Nightのセトリさ」

「ん?ああ」

 少し前に宵闇からメールで送られて来た、今度参加するイベントのセットリスト。それについて、まだ話してなかったことを何とか思い出せたから、今度はそっちに話を振る。

「流れ的にTears for Fearより」

 スマホを出して、そのメールを探しながら話す。

「Like Abyssの方がいいんじゃねぇかと思ったのと…」

 見つけ出したメールを開いて、宵闇に見せる。宵闇は素直に画面を覗き込む。

「4曲目にHate or Fate入れたらどうだ?」

「Dear Luciferと入れ替えか?」

「ああ。リリースも近いし、先行で出しても構わねぇだろ?」

 テンポと曲調は割と近い2曲だ。入れ替えても、セットリストの勢いは削がない。シングル3曲の中でも、この曲なら客もすぐ順応できそうな感じだ。

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