19-5
「ごめん。もっとマシかと思った」
「いや別に、お前と夜景見てもしゃーないし」
「金華山か、四日市のコンビナートの方がキレイだよな」
おっ、ローカルネタ出たね。そうなんだよ、名古屋近郊は意外と夜景に恵まれてる。
「俺はコンビナート夜景が好きだな」
「俺もだよ。名古屋帰る時は行こうか」
行こうか? 何だその、積極的に俺と夜景を見に行こう感は。いやいや、あれは恋人同士とかで行くもんだろ。
宵闇は右腕で頬杖をついて、俺の顔をにこにこしながら眺めてやがる。
まさか、ほんとにこいつ俺のこと好きなのか?
リュウトくんにからかわれたことを、ふと思い出した。レコーディングに追われてここ何日か忘れてたのにな。
「何でお前と行くんだよ」
「いいだろ? 俺、実家になら車あるし」
実家という単語と宵闇が結びつかない。でも、こいつにも親兄弟がいたりするわけだよな。知らんけど。
「夕は実家どこ?」
「千種区だよ。本山」
「あの辺か」
ちなみにうちの近所には、近いってだけで選んだ俺の出身大学がある。
「あー、宵闇は」
「港区」
俺の実家からは同じ名古屋市内とはいえ、結構距離がある。
「どの辺」
港区はあんまり縁がないし、そんなに興味はないんだけど、これも付き合いだ。
「南陽」
「どこだよ」
「だよな」
宵闇は機嫌よく笑う。笑うとちょっと幼くなるよな。割と可愛い。
ノックの音がして、扉が開く。
生中とグレープフルーツジュースがやって来た。メニュー見るの忘れてた。
「お前何食う?」
ヤツとの間にメニューを広げる。
「そうだなぁ…夕は好き嫌いは?」
「そんなにねぇけど…貝はあんまり好きじゃねぇ」
「貝な。魚は」
「好きだよ」
メニューに挟まれた「本日のおすすめ」ってヤツを引っ張り出して、俺の前に置く。
「太刀魚のお造りあるけど」
「タチウオ? 何だそれ」
「知らないのか? まあ、美味いから頼んでみよう」
そうなのか。食ったことないな。





