19-3
今度は更に早いな。1コール切れないうちに出た。
「着いたか?」
「ああ、どこにいる?」
「マックの前にいる」
予想した通りだ。既に俺はそっちに向かって歩いてる。
「OK。すぐ行く」
「待ってるよ」
いや、待ち合わせなんだから待ってて当たり前だろ。
通話を切って、歩いて行く。宵闇の姿はすぐに見えた。あいつも俺に気付いてこっちに向かって歩いて来る。
「おつかれ」
宵闇は笑って俺を迎える。
「おう。飯はどこ行く?」
腹減ったし、とっとと飯食いに行こう。
「あそこのさ、ゆるりって居酒屋行ったことあるか?」
宵闇の指さす先のビルを見るが、そこには入ったことがない。大体、この辺で呑む時は鳥貴族とか庄やとかだな。
「ないな」
「行こうぜ」
今日はぐいぐい来るじゃねぇか。どこ行くか考えるのもめんどくさいから、ちょうどいいか。
「ああ、行こう。腹減ったわ」
「俺も」
宵闇はにこにこしながら、俺の手元に手を伸ばす。
「持ってやるよ。重そうだな」
俺が下げてるバッグの把手をつかんで引く。あれこれと講義の為の資料や小物が詰め込んであるバッグは、確かに結構重い。重いけれども。どう見ても、宵闇の方が俺より断然ひょろくて筋肉もない。持ってもらうのおかしいだろ、これ。
「いやいい、自分で持つし」
バッグを引くと、宵闇はいったん手を離し、今度は反対の手で俺の空いてる手をつかむ。
は? どういうことだ。
「じゃあ行こう」
「はあ?」
宵闇は有無を言わせず俺の手を引いて歩き出す。何なんだこれ。ちょっとビックリした俺は、抵抗出来ずにそのまま引っ張って行かれる。
大通りを渡って向かい側のそのビルにすぐに到着し、宵闇はきょろきょろと入口を探す。
「あ、ここか」
1階に入っている店舗の脇に入口があって、そこを入るとエレベーターがある。タイミング良く1階で待機していたそれに乗り込み、宵闇が最上階の10階のボタンを押した。すぐに扉が閉まり、エレベーターは動き出す。
つかまれたままだった手をそっと引く。大して力は入っていなかったし、抵抗なくヤツの手は離れた。もう一回握ってくるってことはなくて、特に何のリアクションもない。





