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「お前が来られないのは知ってたし、そこで気を回すな。わけがわからん」
自分が行けないかわりに花束をって、何だそれ。…ん? 何かそんなようなことを聞いたような。
「ごめん。次からはスタンドだけにする」
「ああ、そうしてくれ」
…リュウトくんだ。リュウトくんが「行けないけど頑張れ、俺がそばにいると思って」じゃないかって言ってたんだったな。
……何だよ、当たりなのか、あれ。
まあ…その気持ちは、ありがたくなくもないか。
何となく、イライラと昂ってた気持ちがすっと落ち着く。
あー、宵闇、俯いちまってるよ、情けない。
「ま、アレだ。それはそれでサンキュー」
「夕?」
少し明るい声で俺の名前を呼ぶ。
「でも、マジで気まずいからもうやめてくれ」
「わかった」
「応援はLINEとかで頼むわ」
「そうするよ」
満面の、笑み、だな。前髪かかってても何となくわかるようになって来た。手を伸ばして、ヤツの前髪をつかんで上げる。いい笑顔だなおい。俺も何か笑えてきた。
ポケットからスマホを取り出してロックをはずす。
「宵闇、イケメンに戻れ。写メ撮る」
「ん?」
「持てよ、俺自撮り苦手だから」
宵闇はそれを受け取って、カメラを起動する。それから、斜め上に画面を翳す。
「まだへらへらしてる! ツイッターに載っけるからキリッとしやがれ」
まだ何回かしかツイートしてないけど、一応ツイッターやんなきゃいけないことは覚えてんだよ俺も。
宵闇はきゅっと唇を引き結んで、乱れた前髪を直す。
「夕、もうちょっとこっち」
微妙にフレームアウトしてる俺の肩を、宵闇がぐいっと抱き寄せた。画面の中にぴったり収まる。
「撮るぞ? 3、2、1」
シャッター音が鳴る。見事な角度で写った宵闇に比べると、俺はちょっと微妙だな。
「もう一回」
「ああ、じゃ、3、2…あっ、夕、顎上がってる」
「うわ、またか!」
なかなか顎を引くってことを覚えられないな、俺は。ぐっと顎を引いてレンズを見る。
「うん、その角度が一番綺麗だ。よし、3、2、1」
2回目のシャッター音。今度はよく撮れた。宵闇と並んでも遜色ねーじゃん。
撮れた画像を確認して満足する。
「俺にもそれ送っといてよ。俺もそれでツイートするよ」
「おう」
その場でLINE経由で宵闇に送る。
「じゃ、宵闇は行ってよし。セッティング終わったらまたそっち行くから」
「ああ。こっちはまだまだかかるから、ゆっくりでいいよ」
「OK。後でな」
宵闇はまたにっこりと笑うと、軽く手を振ってドアを出て行った。





