16-3
「俺は行けないけど、優哉がんばれ、俺がそばにいると思って。って意味でしょ」
「そばにいてくれなくて全然いいんだよ…」
ライブ前から何故かどっと疲れが出た。とにかく、ミーティング始まるし楽屋に戻ろう。
「優しいねぇ、彼氏」
「宵闇な。彼氏じゃねぇ」
不毛な会話を続けながら、廊下を歩く。
「なかなか羨ましいけど?」
「どこが。どう考えても頭悪いだろ」
大体何なんだ、紫色のバラ。ガラスの仮面か。思い出したわ、どうでもいいけど。あいつの俺に対する紫ゴリ推しは何なんだろうな。バラの上に紫って、いかにもヴィジュアル系のセンスじゃねぇか。
「頑張って考えた感あるじゃん。会ったら、ちゃんとありがとう嬉しかった、って言いなよー?」
「嬉しくねぇんだよ、1ミリも」
楽屋に入ると、さっきのスタッフから受け取ったらしい目録っぽいものに目を通していた晶さんが顔を上げる。
「優哉、ありがとうな、ベルノワールから」
「あーはい…」
「礼言っといてくれ。今度はうちから贈るから」
「はいー…」
これで調子に乗った宵闇が、俺の出るステージ出るステージに花を贈って来ないかがとてつもなく心配だ。
いや、ベルノワール名義でディスコード宛に花を贈ったのは正解なんだけれども。花束が余計なんだよ。
ちょっと釘さしておかねぇとな。
俺は隅の椅子に腰掛け、置かれてるミネラルウォーターを口にする。
そのことはとりあえず置いといて。頭切り替えてライブに臨まないとな。あいつのことは一旦忘れよう。
って、何気なく目をやった先にはめちゃめちゃ目立つ紫色のバラが横たわってた。
あーもう、気になる。





