16-2
「あーそ」
リュウトくんは俺の素っ気ない返答も気にかけてない様子だ。
「優哉くんいるー?」
戸口でスタッフが俺を呼んでる。
「はーい」
返事を返して立ち上がる。
「ああ、いたいた。はい、これ」
スタッフが抱えていたのは、紫色のバラの小さい花束。それを、俺に向かって差し出す。
「は? 俺? え? おかしくないすか?」
俺サポートだよ? 今まで、ファンからプレゼントとかもらったこともあんまりねぇし。何かの間違いだろ。
「ほら、優哉くん宛になってるよ?」
スタッフの指が指し示したのは、ラッピングしてあるフィルムの内側に貼られたカード。…ほんとに、To.Yuyaって書いてあるわ。こんなもん誰から…。
「…はぁ!?」
カードの下の方に書いてある名前。ほぼ名前じゃねぇ上に、アルファベット表記だとピンと来ない。
「宵闇!?」
バカじゃねぇのあいつ! っていうか、やっぱりバカだよ。バカでしかない。マジで頭悪い。
リュウトくんは受け取っちまった俺の手元を覗き込んで、にやーっといやらしく笑う。
「愛されてるじゃーん。紫のバラの人だ」
それ何だっけ、どっかで聞いた…とかどうでも良いんだよ! 何だこの恥ずかしいプレゼントは。逆に嫌がらせだろ。メンバー差し置いて花もらうとか気まずくてしゃーないわ!
ただただ「バカ」の一言が頭で渦巻いていて、リュウトくんにツッコむ言葉も出ない。
「スタンドフラワーももらってるよ、ベルノワールさんからで。ロビーにあるから」
「はい!?」
ちょっと待て、そっちの当て書きまで俺になってねぇだろうな!? そんなことになってたら、このままその場で粉砕するぞ、スタンドフラワー。
慌てて楽屋を飛び出して、通路を抜けてロビーに向かう。
ロビーに出てきょろきょろ見回すと、壁際にいくつかスタンドフラワーが並んでいる。
どれだ、ベルノワール名義。目で探すと、端から2つ目に並べられていた。近付いてよく見る。
「良かった…」
俺はほっとため息をつく。ちゃんとディスコード宛になってた。どうにかロビーで恥を晒さずに済んだ。
「気が利くねー、彼氏」
振り向くと、リュウトくんが腕を組んでスタンドフラワーを眺めてる。着いて来たんかい。
「スタンドフラワーだけでいいんだよ…俺宛に花束とかいらねぇんだよ…」
「えー、いいじゃん」
「昨夜会って、今晩また顔見るんだよ。花束もらういわれがねぇよ…」
ほんとに意味がわからん。そもそも、花束なんかもらったのは初めてのような気がする。初めてが宵闇からかよ。もうちょっと感動的なシーンでもらいたかったわ。





