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次の日は個人練習を午前からに繰り上げて、午後からの綺悧のレコーディングに付き合った。Hateのラスサビは開始30分くらいでなかなかいいのが録れて、弾みがつき、綺悧に調子が戻ってきた。
Riskのヴォーカルパートが少な目なのも幸いして、Riskは昨夜の終了間際に仕上がった。
宵闇に言いつけたヴォーカル録りのルールは、上手く綺悧にハマったみたいだ。緊張感を程よく保ちながら、テンションを下げることなく進められる。これは続けた方がいい。
残すヴォーカル録りは今日一日。Wheel一曲だ。今の綺悧のコンディションなら大丈夫だろう。今日は俺がディスコードのライブだからほぼ行けないけど、終了してからまだレコーディングやってるようなら覗きに行く、って言ってある。宵闇のディレクションだけなのはちょっと不安だけど、俺が行くまで頑張ってくれ。
大型の商業施設の一角にある、会場のLED東京に到着して車を降りる。荷物をカートに載せて、ガラガラ引きながら通用口を通って楽屋に入った。
「おはようございまーす」
中に声をかけると、晶さんとヴォーカルの恭平さんがコーヒーを飲みながら喋っていた。
「おはよう優哉」
「おはよう。早いな」
「早いですか? いつもこんなもんのつもりですよ?」
笑いながら、荷物を解く。特別な衣装ってもんは別になくて、自前のタンクトップとレザーパンツだけだ。プレイし易いように、足元はスニーカー。着替えるのはリハの後だ。
セットはディスコード側に預けてあるから、既に搬入してもらってある。今頃組み立ててもらってるはず。細々とした小物やスティックは持参。リハーサルの前に、チューニングしに行かないとな。細かい位置の調整も勿論、自分でする。
靴だけブーツからスニーカーに履き替えて、持って来た練習パッドを立てる。まだ時間はあるから、軽くウォームアップに叩いておこう。
スティックを一組取り出して、くるくる回す。さーて、今日もやっちゃいますか。基本のエイトビートから練習を開始。4分音符から8分音符、16分音符、32分と手数を増やしていって、トリル、ロール。それが出来たら、今度は足の方を同様に。次はバスドラパターンのバリエーション。
楽しいよな、これ。基礎練がつまらんってヤツの気が知れない。
そんなことをしているうちに、他のメンバーも揃って来た。
「おはよ優哉!」
リュウトくんがそばを通りがてら、肩を叩いていく。
「おうおはよ!」
そろそろ本来の集合時間だ。手を止めて、スティックを置く。集合時間を過ぎたら、最終ミーティングが始まる。
バッグを置いたリュウトくんが、勢いよく俺の肩をばしっと抱く。
「今日彼氏は!?」
「彼氏じゃねぇけど、ヴォーカルレックの最終日」
まだ言うか。俺も諦めないで否定する。
「抜けて来ないの?」
「日程がマジでギリッギリだからな、無理。ライブ終わったら俺がスタジオ行くレベル」
「大変だね。てゆっか、ライブ終わってから行くんだー、へぇー」
「そういう意味で行くんじゃねえよ」
俺が宵闇に会いたいんじゃなくって、綺悧のフォローで行くんだよ。そういう色気のある理由はほぼマイナスだってくらいない。





