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「おはようございまーっす」
スタジオの中に声をかけながら、中に入る。真っ先に、端の方でキーボードを繋いでるリュウトくんを探し出した。
「おい、リュウトくん!」
見つけた瞬間に、直線でキーボード前に攻め込む。
「おはよ、優哉。昨夜は彼氏と一緒だった?」
必要以上ににこーっと笑いやがる。
「ちげーし彼氏じゃねーし一緒にいたはいたけど彼氏じゃねーし!」
リュウトくんは手を休めずに、あははと笑う。
「LINE、返事がないからさぁ。さてはそういうことかと思ったんだけど、そうだったんだ」
「そうだったけどそうじゃないから彼氏じゃねーから」
あーもうめんどくさい。勘弁してくれ。
「手羽先喜んでた?」
「喜んでたけど彼氏じゃねーから」
「で、お泊まり? どっちに?」
「俺んちに泊まってったけど彼氏じゃねーから」
リュウトくんはことごとく俺の「彼氏じゃねーから」を無視しよる。
昨夜リュウトくんから来たLINEは、今朝になってやっと思い出して見た。完全に忘れてた上に、うっかりビールが進みすぎて寝落ちしちまったんだ。取り残された宵闇は帰るに帰れず、泊まってったっていうか朝までいた。多分、あいつロクに寝てない。
そのリュウトくんからのLINEは「今晩は彼氏とデートかな? 明日のリハ遅刻するなよー」っていう、単なる冷やかし。
「そっかそっか。何か言ってた?」
「別に大したこと何も言ってねーし、彼氏じゃねーし」
「今度のライブ、呼んであげたらいいのに」
「レコーディングだし彼氏じゃねーし」
「そこは、別に所属バンドのリーダーなんだから彼氏かどうかは関係ないけど」
関係ないかどうかは別にして、否定したいんだよ、彼氏疑惑を。
「おい、優哉、準備しろよ?」
リーダーでギタリストの晶さんが、ごちゃごちゃやってる俺に声をかける。
「あ、すんません! すぐにやりまーす」
俺は慌てて返事をして、リュウトくんを振り返る。
「彼氏じゃねーからな?」
「そんなに否定したら、宵闇くん可哀相じゃん」
「うっせ」
リュウトくんに言い捨てて、ドラムセットに入る。今日のセットはスタジオの機材だ。スネアとタム一つとペダル、チャイナシンバルだけ持ち込んでのリハーサル。フルセットじゃないから完全再現は出来ないけど、最低限必要なものは揃えた。
ディスコードがいつも使ってるスタジオだから、勝手はわかってる。備品置き場から足りないスタンド類を借りて来てセッティングを手早くすませ、スネアのチューニングにかかる。
「宵闇くんはまだ何にも言ってこないの?」
「まだって何だよ」





