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冷蔵庫の卵を一つ出して差し出してやる。
「これやるから」
「卵か…じゃあしょうがないな…」
何だ、簡単に買収出来たな。
互いに目を見合わせ、吹き出す。いい大人がバカなことやってるのがおかしくなってきた。
宵闇は卵を受け取って、洗いカゴから取り出したドンブリに入れる。それから、きちんと並べた手羽先をトースターに入れた。
俺は新しいタバコに火をつけ、少し残ってたビールを飲み干す。もう一本いこうかな。
そうだ、Arch EnemyとEvanescenceのCD出しておいてやらねぇと。
部屋の壁を占拠してるCDラックに向き合う。一応、アルファベット順になってる、はずだ。たまに適当なことするから、ちょっと自分が信用ならんが。
デジタル配信が一般的にはなってるけど、俺はやっぱり現物があるのが好きなんだよなぁ。資料や参考で聴いたりする時は、アップルミュージックなんかを使うこともあるけど、好きなアーティストの作品は必ずパッケージで買う。
指でCDの背を順に辿る。
キッチンではトースターがチン、と音を立てる。いい匂いもして来た。
CDで貸してくれってことは、宵闇もCD派なんだろうな。何となく信用出来る気がする。
Arch Enemyは…とりあえずこのベスト盤がいいだろう。Evanescenceは最新盤のこれで。まあ、レコーディングもあるし、そんなにたくさんは聴けないだろう。
ライブアルバムとDVDもいるかな。そっちはまた今度でいいか。
トースターがまた音を鳴らす。
ああ、こいつにはGALNERYUSも聴かせときたいな。絶対勉強になる。
聴かせたいCDを選んでたら、キリがない。どれもこれも聴かせたいものばかりだ。何せ、俺が選び抜いたアーティスト揃いなんだから。
振り返ると、テーブルにはあっためられた手羽先と、宵闇の分のチキンラーメン。卵がいい感じにほんのり白くなってる。美味そうだなぁ…俺も食おうかな。
俺はCD2枚を宵闇に渡しながら座る。
「Arch EnemyとEvanescence」
「サンキュ。聴いてみるよ」
「おう。それと」
テーブルの上のペンスタンドに引っ掛けてある髪ゴムを取って、これも宵闇に渡す。
「俺と飯食う時は、前髪しばれ。うっとうしい」
宵闇はちょっと驚いた顔をしてから微笑んで、前髪をかきあげた。





