12-2
「ああ、俺、メタルはあんまり聴いて来なかったから」
「そうか、お前から見たらXはメタルのくくりなのか」
「違うのか?」
「いや、メタルだけど。ヴィジュアル系でもあるだろ」
これは誰でも知ってると思ってたけど、そうでもないのか。
「言われてみれば、そうか」
「宵闇は何聴いて来たんだ?」
「俺は…DIR EN GREYとかthe GazettEとか、lynch.とかだな。Versaillesも好きだった。摩天楼オペラも好きだよ」
なるほど、コテコテにヴィジュアル系ばっかだな。俺もゴリゴリにメタルばっかだけど。
それでも、Versaillesとかlynch.が好きなら話は早いし、こいつの作る曲にメタルと共通の要素があるのにも納得だ。
「じゃあ、Arch EnemyとかEvanescenceとか聴けよ」
宵闇の作曲のセンスは、そっちへ伸ばした方がいい。ベースプレイヤーとしては、別にスーパーベーシストにまでなる必要はない。今よりはもっと上手くなっては欲しいけど。それより、コンポーザーとしての方が伸びると読んだ。ずっと、曲自体はそれほど悪くないと思ってたんだ。こいつが作る同期のシンセもなかなか良い。
「名前は聞いたことあるかな」
「うちにあるから、貸してやるよ。それか、アップルミュージックとか入ってるか?」
「いや、貸してくれ」
何か明るい声だな。ヴィジュアル系以外にも興味持ったんなら、いい反応だ。
BGMの音量が一瞬下がって通知音が鳴る。ちらっとディスプレイに目をやると、リュウトくんからLINEが入ったらしい。
はいはい、運転中。帰ったら見よう。高速も降りたし、家まではもうすぐだ。
宵闇は大人しくディスコードを聴いてる。割と好みなんじゃねぇかな。
深夜の道は空いていて、信号にも上手い具合に引っかからないで自宅近くの駐車場に到着。ついてんな。30分ちょっと切った。
車を降りて、徒歩3分で自宅だ。
「あがれよ」
宵闇に声をかけて部屋に入る。宵闇は「お邪魔しまーす」とか言いながらあがってきた。ヤツを座らせて、俺はアメスピをくわえて冷蔵庫を開ける。
「お前も吸っていいぞー?」
「いや、俺は吸わないから」
「そーか」
酒もタバコもやらないのか。なかなかクリーンなバンドマンだな。逆に、俺がおっさんくさいんじゃないかって気がして来た。俺の方が歳下なんだけど。
冷蔵庫から手羽先を取り出し、パッケージを見てみる。トースターであっためんのか。予熱? 予熱って何だ。
「宵闇、ヨネツって何だ」
「ケンシ?」
「そりゃパプリカだろ。ちげーって」
本気なのかボケたのかどっちだ。宵闇は立ってきて、俺の手からパッケージを受け取ると説明書きを読んでいる。
「ああ、トースターあっためといてから、手羽先入れろってことだろ」
「あー、そういうことか」
そばにあるトースターのダイヤルを、適当にぐるっと回して動かす。どれくらいあっためんのかよくわからんが、大体でいいだろ。





