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Hate or Fate?  作者: たきかわ由里
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11-3


 やっぱり。結構いるんだよな、こういうヤツ。動機としては良いと思うし、好きな曲をコピーするのは楽しいから頑張れるってのはわかる。俺も、ANTHEMとFLATBACKERとE.Z.Oは死ぬ程コピーした。でもな。

「基礎練は」

「教則本で見てやってみたけど、面白くないからさぁ。すぐ飽きた」

 典型的に基礎すっ飛ばしちゃったタイプだよこいつ…。応用編にあたる楽曲のコピーの方を頑張っちゃって、何か弾ける気になっちゃうパターン。その実、基礎が出来てないから、形だけしかなぞってないし、応用が効かない。

 やれよバカ、って言いたいんだけど。だけど。

 隣で腕を組んで黙ってる宵闇にひっそり目線を送る。宵闇はすっと唇の片端をあげると、口を開いた。

「基礎からやり直せ」

 おっ、ワンマンリーダー出たよ。なかなか決まってんな。カッコいいじゃん。

 心の中で冷やかしながら、俺は頷く。

「今回はもう無理だけど、礼華とどこかレッスン行くか。一度ちゃんと習った方がいい」

 朱雨はきょとんとしている。そりゃそうだろう。メジャー4年目にして、基礎レッスンに行けって言われるとは思ってもみなかっただろうからな。自分のレベルをどこまで自覚してるか知らんけど。

「ここからは、お前にも本物のギタリストになってもらわないとな」

 おっ、言うねぇ。いい調子だ。よっ、とかかけ声掛けて茶化したい気持ちをぐっと抑える。これは真面目な場面だ。

「今度の2Days終わったら、考えろ」

「はい」

 淡々とした宵闇の言葉に、朱雨はこう答えるしかない。

「ま、頑張ろうぜ! やれるって」

 朱雨の肩をぱん、と叩くと、朱雨はほっとしたように頷いた。5年以上何も考えずに宵闇に着いてきた朱雨にとって、宵闇の言うことは重みがあるんだろう。

 それは恐らく、礼華と綺悧にとっても同じだろう。ミーティングになってないミーティングの様子からして、宵闇に任せておけば間違いない、という意識しか感じない。

 何の意見もねぇってのは嘆かわしいけど、今の状況では好都合だ。まずは実力をつけさせることが先決だから、宵闇からの司令っていう絶対的なものは使える。実力がついた頃に自信と意志を持って活動に臨んでくれれば、それでいい。

「宵闇、次どこ録るんだ?」

「順番通り、サビだ」

 宵闇が譜面を出して指でそこを示す。

「ふうん…」

 それを覗き込み、確認する。さり気なく朱雨を見ると、譜面は見ていない。多分、読めねぇな。

 指で譜面を辿るフリをしながら、強弱を出して欲しいところを軽く叩いて行く。宵闇になら、これで通じるはずだ。ヤツと目を合わせると、すっと細める。伝わったな。

「朱雨、始めるぞ」

「はい」

 朱雨は残りのコーヒーをぐいっと飲んで立ち上がり、ブースに入る。

「いっぺんは全部弾かせたのか?」

 これで朱雨に聞こえなくなったから、普通に宵闇に話す。

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