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Hate or Fate?  作者: たきかわ由里
29/232

11-1

     ◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇




 何が悲しくて、俺は新幹線の中で肩身の狭い想いをしてまで手羽を買って帰ってるんだ。めちゃめちゃいい匂いしやがる。

 別に手羽先なんかどっちでもいいって言ったのに、リュウトくんが張り切って地下街を案内してくれた。そこまでしてもらったら、そりゃ、買わないわけにはいかないだろ。

 手羽先って結構食えるんだよな。一人前5本ってのは少ない。だから、5人前。こうなったら俺も食ってやる。

 東京に帰りついたのは結構早くて、14時。レコーディング始めてるな。スタジオへ持って行ってやろうか、とも思ったけど、手羽先はもう冷めてる。スタジオにレンジはないし、うちに置いといて、宵闇に寄らせよう。どうせこっから徒歩20分だし。

 一旦家に帰って荷物を置く。さて。終了時間は深夜になるだろうな。

 それまでゆっくり休むか…いや、ちょっとレコーディング覗きに行くか。やっぱ気になるし。

 行っても直接口出さなきゃいいだろ。俺は自重出来るから、ちゃんと宵闇の立場は守ってやる。

 キーを取って財布と携帯をボディバッグに移して部屋を出る。

 車でレコーディングスタジオまではGoogleマップによれば30分。だけど、首都高は渋滞してっから50分くらいだ。

 のろのろ進む車の中で、ベルノワールの音源を流す。どう聴いても、昨日まで浸かってたディスコードとの落差は哀しくなるくらい激しい。

 でも、これを建て直して行こうってことを考えると、結構面白い。いずれ、ヴィジュアル系の枠を破るとこまで成長したら、立派なサクセスストーリーだろ。

 月末のハロウィンイベントは、持ち時間40分つってたな。40分だと、まあ6曲ぐらいか。俺がセットリスト組むなら、どれを使うかな。6曲で、MCは2回。新曲も先行で組み込めるといいよな。

 そんなことを考えながら聴いているうちに、アルバム2枚目の途中で到着。中に入って受付で今日使ってるスタジオを聞いてそこへ向かい、ドアを開ける。 

 コンソールルームにいるスタッフと、肘をついてブースを見ていた宵闇が振り向く。

 宵闇は一瞬笑顔を浮かべたけど、すぐにふっと元の真顔に戻って視線をブースに戻す。なるほど、プライベートと仕事モードはきっちり使い分けるわけだな。あんまり、他のメンバーにへらへらしてるとこは見られない方がいいのは同感だ。

 宵闇の隣に近付き、ブースを覗く。

 昨夜、宵闇からHate or Fateは録り終わって、Riskに入ったとは聞いた。ペースとしては順調なはずだ。

 今はRiskのBメロのリフだな。ここは難しいとこじゃないけど、アップストロークとダウンストロークの音が均一になることが条件だ。スピードが早めだから、朱雨がそれを守りながら着いて来られるかにかかってる。

 半端なとこで音が止まった。

「宵闇さん、もう一回お願いします」

 スピーカーを通して、朱雨の声がする。

「OK」

 冷静な声。オフで話す時より、気持ち低い。やっぱこいつ、リーダーなんだなぁ。

 朱雨は何度かリフを繰り返し弾き、顔を上げる。

「お願いします」

「じゃあ、音出すぞ」

 Bメロに入る少し前からのドラムとベース、ギターの音。ここから2小節。

 朱雨が弾き始める。

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