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ただ、かなり通るハイトーンを持っているのと、音感は悪くなさそうなのが強みだ。これは、簡単には身につかないから、それだけでも良い。
こいつは、これが終わったらボイトレ地獄に叩き込まねぇとな。改めて基礎の裏打ちが出来たら、ベルノワールの顔として申し分ない。
てことは、日数的には…。
「オーヴァーダビングとリテイクの時間ねぇじゃん」
「何とかあと2日もらった」
「やるじゃん」
ちゃんと計算出来てるな。よし、それでこそプロデューサー。リリース日は決まってしまっているから、このもぎ取った2日は限界ギリギリだ。
「で、今日は何時までやんの」
「何時になるかな。このペースだと…キリがつくのは2時頃かな」
「頑張れよ。俺は寝るけど」
気配を感じて隣のベッドを見ると、いつの間にかシャワーを浴びて来たリュウトくんが、髪を拭きながらまたニヤニヤしてる。
あーもう、思い出しちまった。
「ああ、おやすみ。明日名古屋だろ?」
「おう。何か土産いるか?」
何となく、ノリで聞いてみる。こいつも名古屋人なんだから、特別土産が欲しかったりしないだろうけど。
「そうだな、手羽先」
「はあ? 手羽先?」
そこはういろうとかゆかりとか言うとこだろ。手羽先が土産って。
「明後日の帰り、新幹線だろ?」
「ああ、そうだけど」
「エスカで売ってるから、よろしくな。風来坊だぞ」
手羽先つったら山ちゃんだろ。
「そんな日持ちしねぇもん」
「受け取りに行くよ。か、スタジオ来いよ」
「はぁ…」
ため息をつく。そこまでして手羽先食いたいか、こいつは。しゃあねぇな。
「時間あったら寄ってくわ。おやすみ」
「楽しみにしてる。ゆっくり休めよ」
「おーう」
耳からスマホを離し、画面を見見る。秒数のカウントはそのまま止まらない。あれ、あいつ切らないな。10秒ぐらい画面を見つめ、まだ止まらないからこっちから切る。
「絶対付き合ってるっしょ」
リュウトくんのニヤニヤが止まらない。おいおい勘弁してくれよ。





