10-3
「今日の、このこまめなLINEも、明らかにそうだよね」
「明らかにってなぁ…」
「…っと、優哉、電話。彼氏から」
「彼氏じゃねぇって」
リュウトくんの手の中で震えてるスマホを受け取って画面を見る。宵闇からだ。LINEが既読になったのに気付いたな。
スワイプして出てやる。
「何だ、ヒマ宵闇」
「別にヒマじゃないけど。おつかれ、夕」
電話の向こうの宵闇の声は、心做しか楽しそうだ。
「おう、お前もおつかれ」
「ライブどうだった?」
「楽しかった。成功」
「そうか、良かった」
俺のベルノワール以外の仕事なんか、宵闇にはどうでもいいだろうよ。
「何か用か?」
毎日繰り返してる質問を投げかける。答えは大体わかってるけど。
「いや、別に。どうしてるかと思ってな」
「ったく。だからお前ヒマかっつーの」
「知ってるだろ。ヒマじゃない」
俺はこれでもバカじゃないから、それはわかってる。どう考えたって、ヒマなわけがない。これでヒマだったら、絶対に手を抜いた仕事をしてるとしか考えられないし、今のこいつは手を抜くような男じゃない。
「だから聞いてんだよ」
「今、休憩中だ」
「そっか。礼華はちゃんと終わったか?」
結局、恒例の俺から進捗を聞く展開だ。てか、そもそも相談があるんじゃなきゃ、俺に毎日進捗を知らせる必要ってないはずなんだけどな。俺、サブリーダーなわけじゃないし。逆にサブリーダーなんだったら、毎日現場行くわ。
「ああ、夕方に何とか終わって、今は朱雨」
聞くまでもない予定通りの進捗だ。
「で、朱雨の調子は」
「随分練習して来た様子だよ。アップストロークがちょっとマシになってる」
「ちょっとでもマシになったなら、今回は良しだな」
「ああ。今のところはまあまあ順調。俺も使えそうなフレーズとかソロとかある程度考えてきたから、明日はその辺煮詰めながら録るよ」
「ん。3日半で終わるといいな」
ギター組も心配だったけど、それより心配なのは実はこの後の綺悧だ。恐らく、綺悧に時間がかかるだろうから、ギターは早く終われるなら終わった方がいい。オーヴァーダビングも手を焼きそうだし。
俺のリテイクは少しだから、セッティング入れても3時間ももらえれば充分だし、オーヴァーダビングとかコーラス録りの時にやれる。
「何とかやってみる。出来れば綺悧に5日欲しいからな」
ヴォーカルは生身が楽器だから、どうしても限界がある。特に、基礎が出来てない綺悧に持久力はないだろう。どう聞いても発声が喉からだ。ライブ音源のアンコールなんか、こいつ血反吐吐くんじゃねぇかって感じだ。一日に歌える時間は長くなさそうだし、休ませる時間も必要だ。





