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Hate or Fate?  作者: たきかわ由里
26/232

10-3

「今日の、このこまめなLINEも、明らかにそうだよね」

「明らかにってなぁ…」

「…っと、優哉、電話。彼氏から」

「彼氏じゃねぇって」

 リュウトくんの手の中で震えてるスマホを受け取って画面を見る。宵闇からだ。LINEが既読になったのに気付いたな。

 スワイプして出てやる。

「何だ、ヒマ宵闇」

「別にヒマじゃないけど。おつかれ、夕」

 電話の向こうの宵闇の声は、心做しか楽しそうだ。

「おう、お前もおつかれ」

「ライブどうだった?」

「楽しかった。成功」

「そうか、良かった」

 俺のベルノワール以外の仕事なんか、宵闇にはどうでもいいだろうよ。

「何か用か?」

 毎日繰り返してる質問を投げかける。答えは大体わかってるけど。

「いや、別に。どうしてるかと思ってな」

「ったく。だからお前ヒマかっつーの」

「知ってるだろ。ヒマじゃない」

 俺はこれでもバカじゃないから、それはわかってる。どう考えたって、ヒマなわけがない。これでヒマだったら、絶対に手を抜いた仕事をしてるとしか考えられないし、今のこいつは手を抜くような男じゃない。

「だから聞いてんだよ」

「今、休憩中だ」

「そっか。礼華はちゃんと終わったか?」

 結局、恒例の俺から進捗を聞く展開だ。てか、そもそも相談があるんじゃなきゃ、俺に毎日進捗を知らせる必要ってないはずなんだけどな。俺、サブリーダーなわけじゃないし。逆にサブリーダーなんだったら、毎日現場行くわ。

「ああ、夕方に何とか終わって、今は朱雨」

 聞くまでもない予定通りの進捗だ。

「で、朱雨の調子は」

「随分練習して来た様子だよ。アップストロークがちょっとマシになってる」

「ちょっとでもマシになったなら、今回は良しだな」

「ああ。今のところはまあまあ順調。俺も使えそうなフレーズとかソロとかある程度考えてきたから、明日はその辺煮詰めながら録るよ」

「ん。3日半で終わるといいな」

 ギター組も心配だったけど、それより心配なのは実はこの後の綺悧だ。恐らく、綺悧に時間がかかるだろうから、ギターは早く終われるなら終わった方がいい。オーヴァーダビングも手を焼きそうだし。 

 俺のリテイクは少しだから、セッティング入れても3時間ももらえれば充分だし、オーヴァーダビングとかコーラス録りの時にやれる。

「何とかやってみる。出来れば綺悧に5日欲しいからな」

 ヴォーカルは生身が楽器だから、どうしても限界がある。特に、基礎が出来てない綺悧に持久力はないだろう。どう聞いても発声が喉からだ。ライブ音源のアンコールなんか、こいつ血反吐吐くんじゃねぇかって感じだ。一日に歌える時間は長くなさそうだし、休ませる時間も必要だ。

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