10-2
「へー。見てもいい?」
「いいよ。大した内容ねぇよ?」
リュウトくんは俺のスマホを受け取り、画面をスクロールして、吹き出す。えっ、何でこんなめっちゃ笑ってんの。
「ちょっとさぁ、用もないのに毎日LINE入って来るわけ?」
「そうなんだよ。今レコーディング中で、他のメンバーのケツ叩いてるからヒマじゃねぇはずなんだけどな」
「寂しがり屋なのかな」
リュウトくんはまだくすくす可笑しそうに笑ってる。
「いや? 知らねーけど、毎日メンバーの誰かとは会ってるし連絡もとってるんだから、寂しかねぇだろ」
ほんとさぁ、聞かなきゃレコーディング状況も言わないし。俺が聞くから結果的に業務連絡になってるけど、聞かなかったら全然意味ないぞ。
「ふぅん…そんな忙しいのに、会えないか、とか言って来るんだ」
「多分、バカなんだろ」
適当にそう答えて、立ち上がる。汗もかいてるし、さっさと風呂入って寝よう。明日は名古屋だし。
「そうかな?」
どっか含みのある、リュウトくんの口調。振り向くと、ニヤニヤしてる。
「なに」
「何でゴリゴリのヘヴィメタルな優哉が、キラッキラのベルノワールに入ったの。全然、優哉のレベルに合ってないしさ」
俺がベルノワールに入ったって聞いて、リュウトくんも音源を聴いてみてくれた。余りの下手さにひっくり返ってたけどな。
「ん? ああ…うーん。勢い、かな」
「勢い」
「ああ、オーディションで…つっかかられたっつーか、舐められたっつーか」
「どんな風に?」
「ドア開けた瞬間に、合格って言われた。バカにしてんだろ」
リュウトくんは、また笑う。笑いごとじゃねぇよ、ほんとに。
「それ、リーダーが? えーと、宵闇くん?」
LINEの画面を見ながら、名前を確認する。
「そう、宵闇。あいつのワンマンだから、決めるのは全部あいつだ」
「あー、そうかぁ。そうなんだぁ」
「何だよ。何納得してんの」
「だってさ、絶対宵闇くん、優哉が好きじゃん」
「はぁー? どの辺が」
「全部、全部。用もなく毎日欠かさずLINE、時間割いて会いたい、他の人に会ってても優哉に連絡」
「いや、ないない。ないわ。ない」
それは考えたこともない。別に男に好かれたら嫌だとかそういうんじゃないけど。宵闇のことは、一緒にやってみてもいいベーシストだと思ってる程度だ。そういう、恋愛っぽいのは想像してもみなかった。
「ありありじゃん。優哉は全然かもだけど、宵闇くんは完全に惚れてるね」
「そうかぁー? 俺が入ったばっかだから、コミュニケーションとろうとかそういうヤツだろ」
「それなら、メンバー全員で呑みに行こうとかそういう感じにならない? バンドなんだからさぁ」
「あー…」
それは、確かに。宵闇以外とは、オーディションの日以来会ってないし、連絡もとってない。つーか、連絡先も知らねぇわ。





