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Hate or Fate?  作者: たきかわ由里
21/232

9-2

 角を曲がるとすぐに龍谷が見えてくる。平日のこんな時間だ、行列はない。

「よかった、並んでないな」

 宵闇が俺が言おうとしたことを先に言う。こいつも行列嫌いなんだな。ここ美味いから、多少の行列なら我慢して並ぶけど。

 ヤツが先に立って店に入る。店内もまあまあ空席があった。宵闇はテーブル席を選んで座る。俺もその向かいに腰掛けた。

 メニューを手にした宵闇に声をかける。

「何食うよ」

「そうだな…いつものパターンになるけど」

「龍谷ラーメンに餃子?」

「それ」

 俺とまったく同じパターンで食ってるんだな。今までここでバッティングしなかったのが不思議だ。いや、バッティングしてたけど気付いてなかっただけかもな。

 宵闇が前髪をかきあげて笑う。ちょっと優しく見えるな。顔の殆どを覆う長い前髪が、こいつを必要以上にミステリアスに見せてるんだろう。ステージならそれもいいけど、プライベートだったら、ちょっと前髪上げててくれた方が、表情がよくわかって良いのに。

 ラーメンと餃子をそれぞれ2つずつ注文する。

「それとビール。宵闇は?」

「俺はいい」

 出された水に口をつけながら、宵闇は言う。

「何だ、呑まねーの」

「俺、酒はあんまり」

「へぇ!」

 呑まない人が増えてはいるから、別に珍しくないけど、見た感じはかなり呑みそうなのにな。

「じゃ、一つで」

 自分の分だけビールを頼む。それから、宵闇に向き直る。

「で、今日は何だ? 何か話あるんだろ?」

「いや、別にない」

「は? 何だよ、会いたいっつーから出て来てやったのに」

「ああ、会いたかっただけだ」

 変なヤツだな。用もなくて会いたいとか意味がわからん。

「あっそ。じゃ、礼華のレコーディングはどうだよ」

 用がないからって無言で飯食うのも何だしな。それなりに気にはかかっているレコーディングの状況を聞いてみる。

「何とかHate or Fateは録り終わったよ」

「あいつのカッティング、かなりふわふわしてて弱かったけど?」

「とにかくそこを集中的に直させた。かなりマシになったな」

「あと、リズム感な」

「それもクリックに合わせるようにさせたよ」

 ほんと、カッティングがとにかくふわっとしてて、音同士が歯切れ悪くグズグズに繋がってたんだよな。音に力もないし。あれを歯切れ良く、力強く弾くだけでもかなり印象が変わるだろうと読んでた。

 リズム感がダメなのも、まずはクリックにジャストになるよう、繰り返しやるしかない。

 宵闇も同じところに目をつけたなら、良かった。これなら、まだ続くレコーディングもいい方向に行くだろう。

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