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Hate or Fate?  作者: たきかわ由里
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7-1


     ◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇



 ベース録りの3日間は、かなり面白かった。

 予想通り、宵闇が修正してきた残り2曲も相当イケてた。まあ、俺が更にダメ出しして変えてやったけどな。

 リズム隊だけなら、結構ヤバいレベルまで持っていけたと思う。

 ベース録りが終わった時点で俺も直したいところが出てきたから、自分でリテイクを出した。けど、ギター録りとオーヴァーダビング、ヴォーカル録りがこの後に入るから暫しお預け。全体が見えるようになってからリテイク分を録る方がいいような気もするし、それでいい。

 てことで、それまでの間は俺はのんびりと休み…じゃねぇんだなぁ。ちょうどその間にディスコードの東名阪ライブがすっぽりハマりこんでる。昨日までのベルノワールのレコーディングに続いて、今日はディスコードのゲネプロだった。

 ディスコードはガッチガチの様式美メタルだ。プログレ要素まで入ってて、世界的にハイレベル。それこそヨーロッパで評価が高くて、俺も一度、ドイツのフェスに参加したことがある。

 そのディスコードのゲネプロだ。生半可なわけがないのは誰でも想像がつくと思う。それの、10倍キツいと思ってくれ。とにかく徹底的に厳しい。当たり前だけど、俺がサポートとか言うことは一切関係ない。

 フルライブをまるまる2回ぶっ続けでやるような形だ。毎度これは死ぬかと思う。しかも、ディスコードのフルライブは2時間半を越える。それを2回。

 今日も地面を這うようにして、やっとの思いで帰って来た。もう今日は何もしたくねぇ。

 荷物を置くのもそこそこに、すぐにベッドに寝転がる。

 ふかふかの布団が、疲労感以外何も残ってない俺の体を受け止めてくれる。マジ布団愛せる。優しい。

 ゲネプロがこれだから、何なら本番のライブの方が全然楽だ。

 多分、俺、腹減ってるはずだとは思うんだけど、ちょっとよくわからん。食べた方が良いのかな。でも何もしたくねぇなぁ。

 こんなんなっても、ディスコードの仕事は楽しいんだよな。メンバーは厳しいけど、仲良くしてくれるしさ。何よりめちゃくちゃ勉強になる。いずれ正規のドラマーが決まったら、俺の仕事は終わっちまうわけなんだけど。

 サポート始めてそろそろ一年になるかな。何人か候補がまとまる度に、俺にもオーディション受けろって言ってくれるんだけど、それは断ってる。ディスコードの音楽は好きだしやり甲斐はあるけど、様式美とかプログレって枠組の中でこの先やって行きたいかっていうと、そうじゃないなって。

 それなのに、何でベルノワールにはうっかり加入しちまったんだっけなぁ…。自分でもちょっとよくわかんねぇ。勢いとか、売り言葉に買い言葉とか、そんなとこだったっけ。

 目を閉じてそんなしょうもないことをグダグダと考えてると、眠気がやって来る。睡眠と覚醒の境目でふわふわしてる感じ。ウトウトまでは行かない。この微妙な感じが心地良い。ああもう、風呂は起きてから入ろうか。でも、まだ着替えてもない。さあどうしようか…。

 身動きもせずに唸っていると、不意にスマホが呼び出し音を鳴らす。あ、俺、スマホ持ったまま寝てるわ。めんどくせぇな、誰だ。

 のろのろと腕を動かして画面を見る。

「…宵闇か……」

 出ようか出るまいか少し迷う。シカトしても良いんだけどさ。

 もしかしたら、今日の礼華のギター録りのことで何か相談があるのかもしれないな。ふとそれが頭を過ぎる。

 もしそうなら、俺だって気にはなるし。勢いで加入したっつったって、俺が在籍するバンドには違いない。

 画面に指を滑らせて、耳に当てる。

「おーう、何だ宵闇」

「おつかれ。くたびれた声だな」

 余計なお世話だ。

「くたびれとるわ」

「どうした」

「ディスコードのゲネプロで死んで来た」

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