25-4
「朱雨くん早く出来上がったから、先に個人ショット始めてるよ。見に行く?」
「見に行ってみっか」
「うん、行こう。夕さん、撮影の雰囲気見といた方が良くない?」
「そうだな。また顎、顎って言われっからなぁ」
「顎?」
綺悧は不思議そうな顔をして首を傾げる。そうだよな。何だよ、顎って。
とにかく、写真慣れしてる他のメンバーの様子とか、ポーズとか参考にさせてもらおう。
「礼華くん、先にAスタ行っとくね!」
「はーい」
綺悧が声をかけると、礼華は呑気そうな声でそう答える。俺は先を行く綺悧にくっ着いてAスタジオに入る。
そこは、思ってた写真スタジオとは違った。俺はあんまりこの手の知識がないからわかんねぇけど、ヨーロッパの古い城の中みたいな、えらく暗い色調だけど、ゴージャスな家具が並んでる。壁には触ったら気持ちよさそうなカーテンがかかってたり、意味のわからん額縁が飾られてたり。
撮影スタジオって、カメラテストの時みたいな白い幕がかけてあるもんだとばっかり思ってた。
ぽかんと口を開けて見てると、綺悧が肩を叩く。
「どうしたの? 夕さん」
「いや、これがスタジオなのかと思ってな」
「そうだよー。今日は写真に集中するけど、明日はMVだからね」
「ここで?」
そういや、行先は宵闇に任せときゃいいと思って、撮影場所確認してなかったわ。そうか、こういうところで撮るのか。
「ここのスタジオ、いろんなスタジオがあって面白いんだよ。今日は全員このスタジオだけど、明日は他も使うって」
「へー」
どうも撮影ってもんに興味がなくていかんな。その辺全然チェックしてねぇ。
部屋の一角で撮影してる朱雨を見てみると、慣れた様子で少しずつポーズを変えながら連続でどんどん写真におさまっている。
すげぇな。あのどこにでもいる近所の兄ちゃんな感じの朱雨が、やたらとカッコいい。 がっつり入ってるメイクと、綺麗に立てた髪と、無数の鋲に飾り立てられたエナメルの衣装。そんなもんのお陰もあるけど、表情が全然違う。カメラを射抜くような鋭い視線とか、薄ら笑いを浮かべた唇とか。当然顎は引いている。
ラジオ収録の時は、軽くて親しみやすい、どっちかって言うとお調子者キャラだったのにな。それがこんな顔して写真に映るんだから、これぞギャップ萌えじゃねぇのか? こいつのファンが好きなのは、こういうとこなんじゃねぇかな。
カメラマンの横には、腕を組んでその様子を見ている宵闇がいる。
「…朱雨、右手をこう」
朱雨に、手の甲で口元を隠して見せる。朱雨はそれをそのまま真似をする。
「そうだ、目線は左。もっと。限界まで」
うっわ、カッコいいな朱雨。朱雨の三白眼がめちゃめちゃ印象的だ。
「坂井さん、もうちょっとこっちから」
カメラのディスプレイを覗きながら、カメラマンさんを僅かに移動させる。顔のちょっと右側から取りたいってことだな。
「朱雨、もっと目を見開け」





