プロローグ
視界に入ってきたのは法衣や祭服を着た多くの人達と大きな絵画、それを引き立たせるように広がる大きな空間はビザンティン建築調のような作りをした大広間だった。
さっきまで近くのマッテロヤに向かっていた途中の見慣れた景色とは別物の形式に戸惑っていると、法衣を着ている集団から一人の少女が前に出た。
「初めまして、私の言葉は通じるでしょうか?お体の具合はどうですか?」
リンと透き通るような優しい声でその少女は言葉を発した。おそらく自分と同年代ぐらいの見た目の少女は、おもわず息をのむほど美しい容姿であった。
可憐な瞳に美しい銀髪、年齢に似つかわしくない抜群のプロポーション、しかしどこか小動物を彷彿とさせるような庇護欲をそそるTHE理想の異性のような可愛らしい少女であった。
つい見とれてしまったが、彼女に言われた通り自分のことを確かめ始めた。
「身体は...特に問題はないですね、でも、ここはどこですか?俺はマッテロヤに行く約束をしていて,,,というかなんで言葉がわかるんだ?話している言葉は明らかに知らない言葉なのに,,,,」
「それは女神さまが召喚の際にあなたへの送りものとして授けていただいたものだと思われまよ、私の名前はリテュエル・クリスピアノ=アグリニオンです。アグリニオン王国第1王女王位継承権は第3位、あなたを召喚した召喚士でもあります。そしてあなたが今いるこの世界は、あなたが住んでいた世界とは全く違う世界,,,,我々は”セカンド”と呼んでいます。」
そういわれて割とすんなりと納得してしまった。現在の自分の起きている状況を考えるに、彼女の言っていることが本当のことだと物語っていたからだ。もともと俺はリスニングを完璧に聞き取れるほど、外国語がうまかったわけでもなく、また夢にしては五感や建物などの感触ができすぎている現在の状況が、光景が目の前に広がっていたからだ。
そう理解する俺に安心したのかリテュエルは話を切り出し始める。
「あなたを私が召喚した理由としては、この世界を守ってもらうためです。現在この世界では魔物の活動が活発化してきています。それと同じくして、教会のほうで女神さまからの信託が下りました。
その内容が、魔族の崇める神である魔神が復活するとの内容でした。
そのため、魔神に対抗するための手段として、”勇者召喚の儀”を行い、勇者を召喚する必要がありました。
そして勇者として召喚された人こそ、あなたなのです!
お願いします!勇者となって、私たちの世界を救ってください!お願いします!」
俺は思った。これはお約束だと、いわゆる異世界召喚ってやつなのだ。
ラノベやマンガやなろうでは、一般常識となっているアレだ。
元の世界に帰りたいとかそういうことは思っていなくもないが、まさか自分に降りかかると思うとお約束のような憤るような大きな感情は出てこなかった。そっそうですか。といったようなどうしようもの愛感情だけしか俺にはなかった。またお願いを断ったところで、行く当てもない。
異世界召喚あるあるなのであれば、まぁたぶん元の世界に帰る手法はわからないということなんだろう。
もうそんな感じがプンプンする。
ということで、俺には要するに選択肢がない。
そこまで理解すると、言葉にはっきりと意思をのっけてつぶやいた。
「はい、わかりました。俺、勇者になります。」
と、勇者になることが決まったのであった。
書いてて楽しかった。面白い作品にしていきたい。