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Grand Guignol[グラン · ギニョル]  作者: 田所 浩二
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1章一話 私は誰?

この世界ではどうだか知らんが、俺が元いた世界では絶対にしてはならないことが三つある。


一つ、他人を殺すこと。

二つ、公共トイレで息子を育むこと。

そして三つ、自己紹介の時、自分の名前を偽ることだ。



何でこんなこと言ってるかというと、今、俺は、名前を忘れてあたふたしているところなのだ。











「なあ紳士のおじいちゃん、俺の名前がわかるか?」


「記憶障害か、可愛そうな子じゃの。」


夜空を隠す布切れを、いや普通にカーテンを閉めながらおじいちゃんはさりげなくディスってきた。

でも普通に考えたら自分の名前を忘れるなんてのはおかしいにも程がある。

...転生したときに何か手違いが?


「思い出せないので仮の名前を付けてくれます?俺命名センスないので」


「いいのか?わしが?わしがこんな可愛い子に名前を付けてええんか?」


...昔使っていたホッケーマスクをまた被りたくなってきた。


「ええと...ユアちゃん?男の名前で何か知っているものはある?」


「うんとね...えっとね...こうじ?」


和風かよ。急に現世(元いた世界はこう呼ぶことにした)感だすなよ。


「それはわしじゃよ。」


お前かよ。


「他にはあるかな?」


「うんとね...ほかはね...」


少し場の雰囲気も和んだかと思えば、それは唐突に砕け散る。


「サイクロップスだ!やつが来たぞ!今日誰が死ぬか、近所のヤツは確認しとけ!」


俺はこのタイミングでここが天国なんかじゃないことをやっと受け入れることができました。


「おじいちゃん...なにこれ?こわいよ...」


「今はとにかく地下に隠れるんじゃ!サイクロップスは視力の代わりに鋭い嗅覚を手に入れた魔物。地下に隠れてやり過ごすのが一番じゃ。さあ二人とも、早くこっちへ!」


俺は言われるがままにユアを抱き上げ地下室へ駆けようとした。


「ン?コッチカラキノコノニオイガスルナ...ウラ!」


サイクロップスの強烈な一撃が俺の右足に直撃する。


「ダイイチ、ダイニムラビトハッケン!コロス!」


「足が....言うことを聞かないッ...」


どうやらユアは今の衝撃波で気を失ってしまったみたいだ。


「ウラメシイニンゲンヨ、オレノフクシュウノイチゲキヲクラウガイイ!」


転生して即ピンチってのはありがちだが今の俺にはチートなんてものはなく、自由に動かせる四つの棒しかない。最もそのうちのひとつは潰れてしまったが。


周りには少し前間では家だったものが散らばり、両腕の中には怯えきった表情で気を失った少女がいる。


俺が生き残る術は、いまはこれしか考えられない!


俺が名前を思い出すまで、死にたくはないからな。

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