0章 身元整理
三日月昇る夏の夜、少年は一人歩いていた。
ある決意を胸に秘め、親にコンビニに行くとだけ伝えてたどり着いたその場所は、
マンションの屋上だった。
そしてフェンスから身を乗り出し、両手を構え、そのまま落ちた。
「今日のニュースでち。昨夜八王子のとあるマンションで少年(15)が、自殺したでち。
彼の母親はTwitter上で<あの子がまさか自殺するとはおもってなかったよ;(
これからは何を身寄りにしていきていけばいいのかなぁ????>といった発言を残しているでち。
警察はこの件を自殺の方針で捜査を続けているでち...」
「...だそうだ。良かったな、真実が誰にもバレなくて。」
「まさかスーパーヒーロー着地しようとしたら死ぬなんてね、人間ってのは脆すぎじゃないですか?」
「そういうことは死ぬまえに気付いてください。
それよりどうします?転生先チャチャっと決めましょうか?」
目の前に居るのは神様...らしいがどうにも対応がサバサバでそれっぽさが微塵もない。
「転生先を決めるって...どうやって?」
「生前の行いを見ると天国3%、地獄50%、元の世界が27%、異世界20%ですって。
まあ細かい計算方法はよくわかんないけど取り敢えず弾け?」
どうやら転生先を決めるのにもガチャブームが来ているらしい。
「異世界ってのはどういう所ですか?」
「やはり聞きますか。簡単にいっちゃえば地球人の空想の具現化、ってとこですね。」
つまり読む側としてはクソみたいな一部のなろう系主人公に成れる、ということか。
そんなところよりも天国の方が行きたいに決まってるだろう、普通は。
しかし生前は悪行の限りを尽くした俺が天国に上れるなんてきつい冗談だ。
「あのぉ~神様~?私天国行きたいんですけどぉ~...確率操作とか出来ませんかねぇ?」
おいろけ作戦だ。日本のおじさまはこれで騙せたがはたして神は。
「......///」
もう一押し。
「おねがいします~明日何でもしますからぁ~」
まあ明日は天国だろうけどね。
「...しょうがない子だなぁ裕太は、特別にこのまま天国へ飛ばしてやろう!」
やりぃ。
「説明なんて必要ないよな、普通の天国にお前は行けるんだ。それじゃ!」
いや待て早すぎんだろ流石に天国チョクで送られても
「転生!!!!!!!....................あっミスった....」
おい何しt/
/
/ 転生先:異世界 実行確認
/
「ここはどこ?私はだれ?ついでにクスリはどこ?」
わけがわからない!
俺の転生先は天国であるはずなのにここはどうみても村の家の上である。
なぜ村に見えるかは家の並び方がなんとなく木を手で切って羊殺すゲームににているからだ。
「お~いそこの人。何でそんなところで全裸でつっ立ってんだい?」
「股間に傷がつかないよう手で隠してますから、心配は無用です。」
「...取り敢えず見つかる前にわしの家に来るといい。一食一住位は恵んでやろう。」
これはいい人に見つかったな。ついでに服もくれると好感度高いのだが。
ということで今は泊めてもらうことにした。
「...ただいま、いい子にしてたかい?」
「うん!おじいちゃん、おかえりなさい! その人、だれ?」
「このお兄ちゃんお家がないから今日はここでお泊まりするんじゃよ。」
そう言いながら親切な60後半に見えるおじいちゃんが木製のお椀を三つ取り出し、
スープらしき物をそれによそった。
ちなみに俺はクローゼットにあった黒い服を着ている...これ女物か?
「今日のキノコスープもおいしいね!おじいちゃん、なにをしたらこんなにおいしくなるの?」
「簡単じゃよ。ただユアのよろこぶ顔を思いながら作るだけじゃ。
お前さん、まだ着替え終わってないのかい?」
「あっはい。今行きます。」
とはいったがなぜここには男物が一着もないんだ。
キリストは俺にこのスカートを履けと言っているのか。
まあここの人は悪い人では無さそうだし訳を話せば理解してくれるか。
「お待たせしました...」と言ってみたがいまいち場が違う気がする。
「おねえちゃんかわいいね!としいくつ?」
「これユア、おじいちゃんの台詞をとるでない...してお前さん女の子じゃったかのう?」
「よく間違われるんですけどね、このイチモツで証明して見せましょう...
いや冗談ですよ?おじいちゃん本気で股間触んないでください。」
天国はゲイが多いのか...いや待てここは天国ではないのか?
「つかぬことをお訊きしますが...ここは天国ですか?」
「可愛い孫に男の娘がいるこの家は天国といっても過言ではないのじゃ!」
多分比喩がお好きな老人なのだろう。
「お前さん、名はなんと言う?」
「そう言えば名前がまだでしたね。俺の名前は...あれ?」
......誰だっけ?