#4<サラディン1/2>
そして300年後、時は12世紀。
錬金術は沈静化し、大学の研究室に移行した。
ファーティマ朝時代のアズハル学院という大学だ。
主に神学、法学を学ぶが、鉱物学、植物学分野も豊富だ。
そして欧州から十字軍がやってくる。
次々と陥落する中東の都市。
そしてエルサレム。
十字軍がエルサレムを簒奪したと言われている。
だが実際には少々ややこしい経緯があった。
十字軍がセルジューク朝ダマスカスを支配して南下しつつあった。
当時エルサレムはセルジューク朝の代官ソクマンとイルガジの支配下にあった。
十字軍南下に伴い、セルジューク朝のエルサレムは孤立してしまう。
一方、エジプトにはファーティマ朝があった。
これを好機と判断したファーティマ朝は大軍団でエルサレムを包囲。
セルジューク朝の混乱と弱体化に乗っかってエルサレムを攻撃。
支援のないエルサレムはあっという間に陥落した。
ここにファーティマ朝のエルサレムが誕生する。
治めるのはアル=アフダルである。
アラブ人同士の結束が一番必要な時に、あろう事か、勢力争いに陥っていた。
もしセルジューク朝とファーティマ朝が結束していたら?
エルサレム北側の城壁の崩落もなく、弱点もないだろう。
十字軍も跳ね返す事が出来たかも知れない……。
だがそうはならなかったのだ。
この後、エジプトのイフティハール将軍の治政時代となる。
ここに十字軍がエルサレムに到達し、戦闘となった。
エジプト軍は善戦空しく、敗北してしまった。
エルサレムは十字軍のものとなった。
ここで十字軍は残虐の限りを尽くした。
こうして中東は戦乱の時代をむかえる。
この戦乱の時代に一人の英傑が誕生する。
その名はサラディン。
ここはアレクサンドリアから1550km離れたイラクのモスル。
サラディンはバクダードの北西にあるモスルで生まれる。
少年時代は父の移住に伴って各地を転々としていた。
モスルからバールベックへ、バールベックからダマスクスへ。
少年サラディンは父アイユーブの赴任先ダマスクスで20年を過ごす。
この頃シリアの君主ヌール・アッディーンはダマスクスを併合。
叔父で将軍のシールクーフの紹介もあり、君主の目に留まる。
頭脳明晰にして臨機応変、洞察力もある彼はあっという間に出世した。
サラディンには兄と弟がいた。
兄トゥーラーンシャー。
弟アーディル。
サラディンの兄は弟の出世街道にほとんど姿を現さない。
無能ではなく平凡な人物だったようだ。
少年サラディンは14歳にしてシリアの君主ヌール・アッディーンに仕えた。
非凡な才能を発揮して、騎士の称号と領地を手にしている。
14歳はイスラム世界では帯剣の資格を持つ大人だ。
サラディンは弟アーディルに語る。
サラディン「オレもとうとう1人前だ」
アーディル「すごいよ、兄ちゃん」
サラディン「だがなあ、オレは時々考えるんだよな」
アーディル「なんだい、兄ちゃん」
サラディン「こうやって領地を与えられてさ、不満はないよ」
「でもさ、いつまで続くのかなって思ってさ」
弟のアーディルはじっと兄の顔を見た。
こういう前置きをする兄は変わった事を話し出す。
サラディン「自分の国を持ちたい」
「シールクーフおじさんには悪気はないんだよ」
「北アフリカのエジプトをなんとか手にしたいね」
アーディル「ダマスクスじゃないの?」
サラディン「ここはヌール・アッディーンさんの土地だろ」
「欧州の十字軍がエジプトを攻めれば、うちに援軍の要請が来る」
「それに乗っかってカイロに入城しちゃえばいい」
アーディル「兄ちゃんはいつも抜け目がないね」
サラディン「オレはサラディン」
「サラーフ・アッ=ディーン:誇り高き信義だ」
弟のアーディルはじっと兄の顔を見た。
このセリフが出ると話は終わりなのだ。
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1163年十字軍はエルサレムからエジプトに迫った。
当時のエジプトは病弱のカリフに実権はなく、宰相が国を治めていた。
その宰相が政敵の軍部の将軍に国を追われ、シリアに落ち延びてきた。
十字軍が迫っているというのに、今度は内乱騒ぎであった。
宰相はシャワールというアラブ人であった。
軍事政権に陥ったエジプトは、自由も権利も無い。
エジプトを救えば、救国の英雄として、宰相に返り咲けるだろう。
シャワール「5000の兵を持ってエジプトを取り戻したい」
ダマスクス1000+ヒムス1000+ハマー1000+モスル2000でほぼ全軍だ。
アッディーン「それではちと少ない、もっともっと兵を送ろう」
トルコマーン6000+ジャズィーラ3000+クルド4000+アラブ5000=18000
なんと、周辺同盟国や遊牧民騎兵まで出陣させようというのだ。
その合計はなんと正規軍5000+遊牧民騎兵18000合計23000の大軍団である。
シャーワールはぶったまげてしまった。
正規軍はともかく、その他の兵は略奪が目的の雑兵だ。
しかも24000といえばエジプト全土を侵略出来る大軍団である。
ちなみにエジプト正規軍は4000だから、兵力比は約6倍である。
こんな大軍団をエジプトに招き入れたら、どうなるか?
十字軍ではなく、シリア連合軍に国家を蹂躙されてしまう!
アッディーン「どうなされた、お顔の色が青いが」
シャワール「いや、あの、その、頼もしい限りで……」
何の事はない、ヤブヘビだったのだ。
シリア軍は十字軍を撃退しべくエジプトに遠征する。
サラディンは26歳の時に、エジプトに遠征するシリア軍に同行した。
エジプトに到着したシリア軍は政敵の軍部将軍と会敵した。
シャワール「悪く思うな、これもさだめじゃ!」
軍部将軍はあっけなく敗北して、戦死してしまった。
シャワール「勝った!」
シャワールはエジプトの宰相に返り咲いた。
遠征軍の将軍はサラディンの叔父シールクーフであった。
シールクーフ「よし!次は十字軍だ!」
「一緒に十字軍を蹴散らそう!」
シャワール「ほひえれれ……」
シールクーフ「どうした?一緒に蹴散らそう!」
だが、エジプト軍と十字軍は協力して、シリア軍に立ち向かった。
十字軍とぉ???
協力ぅ???




