第一話【俺の武器は世界最強】
ロスト・クライ・ワールドワールドに存在する第一のエリア【ビギンの森】
この森の名前の由来は、初心者が始めて旅をする――ビギナーから案を得て名付けられた。
ビギンの森には強いバジュラは一体もおらず、基本的には弱いバジュラしかいない。そのため最初にゲームを始めたプレイヤーはこの森でバジュラを倒し、経験を積んだりゲームに慣れようとするプレイヤーが多い。
そしてロスト・クライ・ワールドのプレイヤーの一人――小鳥遊凛も、この森でゲームに慣れようとしていた。
……はずだったのだが。
***
「――よし! いくぞ、ノア! 次こそ大丈夫!」
「うぇっ……ひっく……やだぁ」
俺の名前は小鳥遊。どこにでもいる至って普通の高校生だ。
いや、こんなどこにでもありそうな紹介は別にどうでもいい。
それよりも今俺は、とてつもなく深刻な問題に直面している。
「大丈夫だノア! こんなの虫みたいな形した猫だ! 猫ならお前でも触れるだろ? だから、ほら! 早くこの猫を思いきりぶん殴ってやれ!」
「しゃー」カサカサッ
俺達の目前で大樹にへばりつき、カサカサと揺れ動く虫型のバジュラ。
三つあるつぶらな眼をキョロキョロと動かし、針金のような触手をわさわさと動かすその姿は正に虫。しかし、今の俺は何とかこいつを猫と思おうとしていた。
それは何故か? 簡単な理由だよ。俺の武器がなんの因果か、虫がすごく苦手だからだ。
「猫ちがぅぅ! 虫だもん! ずっとカサカサ言ってるもん!」