最初の晩餐会
今、目の前に一つの大きな器に沢山の具材が入っている。
「赤木さん、これは何でしょうか?」
三人いるのに手元には小さい皿だけしかない。
「何言ってるですか?これは鍋ですよ」
「鍋?」
初めて聞いた料理だ。渡辺さんの所ではほとんどがサンドウィッチだったからな。
「旅河さんってジョークもお好きなんですね」
いやいや、ジョークではないよ。一度目の記憶があれば鍋という料理は知ってるはずなんだけれどな。
「そんな事より食べましょうか」
と赤木さんが食べ始めたので俺も食べ始めたのた。二人の真似をして。
「熱っ、、、けど美味しい」
「久しぶりの鍋は美味しいですね。神河さんは料理がとっても上手ですからね」
その後、俺は鍋という料理をひたすら食べた。
「あーもう無理、食べ過ぎた」
と俺は床に寝転がる。すると部屋の隅に立派な仏壇があるのに気づいた。
「赤木さんあの仏壇は誰のなの?」
と神河さんには聞かれないぐらいの小声で赤木さんに聞いた。
「神河さんの両親だよ」
と赤木さんは俺と同じ声で返事をした。
「違うよ。お兄ちゃんもいる」
と訂正してきたのは神河さんだ。
「あれ。聞こえてた?」
かなり小さい声だけで話したんだけどな。
「私ね耳だけいいから」
「そうなんだ。ごめんな辛い事聞いてしまって」
「大丈夫。いつか話そうと思ってたところだし」
とてもいい空気が重くなってしまった。俺はなにも話さずそのまま横になりこの場をどうしようと考えている間に寝てしまった。
トントン。
今、誰かに肩を叩かれたな。
ツンツン。
今、誰かにほっぺたつつかれているな。
ギュッ。
今、誰かがほっぺたつねってる!
「痛いよ」
「おっ、起きた。三十分は寝てたぞ」
ここで自分が寝ていた事に気づいた。
「ゴメンゴメン。腹いっぱいになったら急にねむくなってしまってね」
俺は起き上がる周りを見ると後片付けが終わっていた。これじゃ、ただ食いに来てるだけだな。
「旅河さん、コーヒーはいりますか?」
俺はいると答えた。なんか気まずい後で謝ろう。
「旅河君は一人暮らしをしているのに何か事情がある?」
唐突の赤木さんの質問にビクッと体が動いた。
「嫌なら答えなくてもいいですよ」
素直に一度死んで半神半人として生まれ変わったと言える訳ないよな。
「ごめん、ちょっとトイレ」
と言い一旦トイレに逃げた。
「どうしようか?」
もしも、これから家族についてや小さい頃の出来事など聞かれた時に矛盾した答えを言ってしまったら、いつかバレてしまう。
なので、何かしらの理由を作らなければ。そこで俺は
「カブさん、最適な理由を作ってくれ」
《了解しました》
流石。こういう時にも役に立つんだよな。
《出来ました》
早っ!と思うのと同時に内容が脳に入ってきた。
「この理由ならいいかもな」
俺は二人の所に戻り
「ごめんごめん。えーっと、一人暮らしの理由なんだけど」
そして、俺はガブさんが作ってくれた内容をそのまま伝えた。
簡単に説明すると自分は過去の記憶がなくて親が分からなく仕方なく一人で暮らしていることになっている。
実際に過去の記憶も最初からないし、親だっているわけないから辻褄が合うのだ。
説明をし終わると。
「そんな事があったとは知らなかったよ。嫌な事を聞いてすまなかったね」
赤木さんは完璧に信じているし神河さんは多分理解してくれると思う。
「別に平気です。それより赤木さんはどうなんですか?」
神河さんの一人暮らしの理由は自分が一番分かる。しかし、赤木さんはなぜ一人暮らしなんだ?
「そうだったね。人に聞いて自分は話さないのは卑怯だね。こっちは両親の行方不明が理由なんだ」
「行方不明!けど、戸籍もあるし直ぐに見つかるんじゃないのか?」
「戸籍はね捨ててたんだよ。ちょうど四年前くらいかな」
四年前!それは一度目の自分が死んだ年であり謎の地形変動があった年だ。
それに、戸籍を捨てた、、、だったら。
「もしかして両親はド」
「奴隷は違うよ」
俺が奴隷のドを言おうとしたが直ぐに否定された。
「僕も最初はそう考えたけど、どこかで生きてると思う。だって、自分の口座に毎月誰かから入金があるんだ」
「けど、それだけじゃ」
「そして、誕生日の時には祝い金が届くんだ!」
赤木さんは少し大きめの声で言った。
「コーヒー、冷めますよ」
と少し間が開いた後、神河さんが言った。
「そうだな、こんな話はもう終わろう」
赤木さんは冷静に戻りコーヒーを飲む。
「急に話が変わるんですけど明日近くにショッピングモールがオープンするんですよ一緒に行きませんか?」
そっか明日は土日だ。
「私も行きたい」
「じゃ、俺も」
とそんな感じで明日の約束をして各自の部屋に戻ることになった。
〈とある場所のとある部屋〉
ここにとある二人がいた。
「おい、決行は明日だっよな」
「えぇ、その予定ですが」
「そうか」
「リーダー、安心してくれよ。俺だってやるときやる男だぜ」
「本当だな?俺と同類の奴を見つけるのにどれだけの時間を使ったか」
「はいはい、分かってますよ。それより明日のことなんですが」
「派手にやっていいってことですね」
「別にいいのだが、もしもの時は、、、」
「殺しちゃっていいってことですね」
「まぁそうだがこれが初めの第一歩だからそんなことはないように」
「了解!終わったら飯おごってくださいよ」
「一言多いなお前は」
〈自分の部屋〉
「明日か。それよりショッピングモールなんか近くにあったか?」
《学校と反対側にありまよ》
「あれ?ガブさん物知りだな」
《いえ、マスターも見たはずです。渡辺さんの店からこのアパートに向かう途中に》
「えっ!あったかそんな建物」
《あります。ポストに広告入ってましたから》
「そういえばあった気がする」
と雑談をガブさんとしながら今日を終えた。
あんなことに巻き込まれるとは知らないで。