実力主義の世界
「ただいま」
そう言い玄関のドアを開ける。
「なぁなぁ聞いてくれよ渡辺さん」
俺は散歩で起きた出来事をいち早く渡辺さんに言いたい。
「貴方の神様が目覚めて、女の子を助けたと言いたいんですか?」
先に言われてしまった。
渡辺さんのスキル『透視』で感情が読めるのは知ってる。
けどそういうのは本人に言わせてよ。
「ね。渡辺さん凄いでしょ」
だって女の子を守ったんだぜ。何かしら褒めてくれるでしょう。
しかし、思ってもいない返事が来た。
「失礼ですが今後はそのような行動は控えてください。貴方も我々もバレずに過ごしていきたいのですよ」
褒めてくれると思ったが逆に怒られてしまった。
そうだな、渡辺さんが言うようにバレないことが一番なのだ。
「これから気をつけるよ。それより、ランクって何だ。女の子を襲ってた大人がやたらランクについて聞いてきたんだけど」
「ランクとは身分のことですよ」
身分?前世にはあったかな。考えてみてみるが前世の記憶があまりないので分からない。
仕方なく渡辺さんに説明してもらった。
「四年前ぐらいに天変地異が起こったんですよね。原因は大地との繋がりがある半神半人が大陸や島々を一つにまとめてしまったんです」
と渡辺さんは棚から地図を取ってきた。
「これを見てください。左にあるのが昔の地球で右にあるのが今の地球です」
俺は二つの地図を見て唖然とした。
左の方は小学生の常識にもあったらしく見覚えがある。しかし、右の方は円形の大きな大陸が一つあるのみ。
「嘘だろ。しかし、これがどうやってランクと繋がるんだ?」
「まぁ、これからが重要です。天変地異がいきなり起こり人々は大パニックしたんです。怪我した者や死んでしまった者が出てくる中。自分だけが生き残ろうとしてきた結果がこれです」
あまり分からないがスキルさんが簡単に説明してくれた。
《みんなが自分だけ生き残ろうとした為、世界は混乱し、そこで出来たのがランク制度ということです》
なるほど、と分かったフリをする。
「けどさ、ランクにはどのくらいあるんだ?」
「そうですね。私はBランクですけど五つまでランクがありますね」
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「なるほど分かった」
下から説明すると
Dランクは訳ありらしく差別されるらしい存在。
Cランクは一般で何もかも程々だと。
Bランクは一般が多いがCランクとの違いは金が違うらしい。
Aランクは高級な物をたくさん持っている貴族みたいな奴らなんだって。
そして、最高ランクのSランクは何もかもはヤバイそうだ。
「で、俺は何ランクだ?」
渡辺さんはBランクだし俺もそんくらいかな。
「残念ながら貴方の場合はDランクですね。学生であり金を持っていないのが理由です」
ガーン。
さ、最低ランクのDランクからのスタート。
どうして渡辺さんはBランクなんだよ。
「落ち込まないで下さい。貴方も頑張ればランクは上がりますよ。私の場合はゼウス様からの頼み事だったので最初からBランクですが」
『透視』で感情が読み取られるので会話してなくても渡辺さんは返事をしてくる。
それにとても悔しい。
「まぁまぁ。そんなこと言わずにまず貴方の名前を決めて下さい」
俺はあっけなく論破されたのでささっと晩御飯を食べて寝ることにした。
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「ふぁー、もう朝か」
俺は目をこすってみるとそこには見覚えのある部屋にいた。
確かここは「無」の部屋だったはず。
《マスター、現状報告をしたい為この部屋に呼んでしまいました》
「現状報告か。何についてだ」
俺が聞くとスキルさんではない声がした。
「おいおい、我を忘れては困るのだが」
と言い現れたのが今の俺の姿と似ている武士の格好をした女性が座っていた。
《彼女はマスターと融合した神様です》
なるほど、だから今の俺と似ているのか。
しかし、彼女は苦しそうにしてるので心配になった。
「あのー、神様。大丈夫でしょうか?」
「ああ、大丈夫である。背中の傷が痛むだけだ」
背中?俺は彼女の後ろに回り背中を見てみると刀で斬られた跡があった。
「なにも驚くことではない。騙し討ちにあっただけだ」
いやいや、驚くよ。それに騙し討ちなんて前世の世界ではなかったと思うよ、多分。
《マスター、それにもう一つ言いたいことがあります》
あれ、まだあるのか。
《名前の件についてです。マスターの名前を一応考えたのですが嫌なら拒否して下さいね》
スキルさんは今までの間、知恵を絞って考えていたくれたらしい。
「拒否はしないから早く教えてよ」
どんな名前かとワクワクしていると上から一枚の紙が落ちてきたので拾ってみると【旅河 凪】と書いていた。
《一応説明しておきます。苗字はマスターの前世の名前と融合した神様の名からそれぞれ取り、名前は見た目が女の子なのでそれっぽいのにしました》
旅河 凪か。
知らない人からだと女子と思われそうだな。
「いいね、それにしようか」
《マスター、嫌なら嫌と言って下さいよ》
「嫌じゃないから拒否しないんだよ」
そうそう、ここで拒否してしまったら面倒事になるだけだし。
「それよりスキルさんの名前も考えたぜ」
俺は散歩の途中で素晴らしい名前を考えたのだ
「ガブリエル、でどうかな?」
実際の所は散歩中、通行人にガブリエルと書かれている服を着ていたのから閃いたのだが。
「嫌だったかな、それならまた考え直すけど」
《違います!嬉しすぎて言葉が出なかっただけです》
俺はスキルさんの姿は見えないが余程嬉しいんだと分かる。
なぜなら、ずっと自分の名前をつぶやいているからな。
「そうか、名が決まったようだな。旅河殿」
と女の武士が話しかけてきた。
「旅河、、、?あっ、俺のことか一瞬誰だそいつと思っちゃった」
自分を呼んでるのに違う人を呼んでいる感じだな。
「旅河殿、一つ頼み事がある」
頼み事?面倒なのは嫌なんだけど。
「いいよ、神様。貴方のおかげで今の俺がいるし散歩中に女の子を助かることが出来たのも貴方のおかげだ」
そうそう、それについてはマジ感謝です。
「そうか、ならば頼もう。私はこの背中の傷が酷くて回復するのに時間がかかる。なので、その間貴方には生き延びて欲しい」
それだけなのか?
「そのぐらいなら大丈夫だぜ。武士、いや放浪の神さんよ傷が治るまでここでゆっくりしときな」
まぁ、俺も生き残って二度目の人生楽しみたい。
すると、放浪の神はリラックスし
「ならばありがたい。私のスキルを使っていいから説明は貴方の中にいるガブリエルとやらに聞いておくれ」
と言い放浪の神は部屋の奥に行った。
「スキル、、、ガブさんどんなスキルがある?」
危ねー。
間違えてスキルさんって言いかけたせいでガブリエルをガブさんと言ってしまった。
《怒りませんから大丈夫ですよ。それより新しくスキルを入手しました》
優しい過ぎるよ、ガブさん。
と思っている間にスキルについて説明をし始めた。
《三つあります。
一つ目、『無限スタミナ』走り続けてもへっちゃら。
二つ目、『殺気』やばそうなオーラが出る。
三つ目、『革命』解析不能。》
さっぱり分からん。
「神様、ちょっと聞きたいだけど。スキルについて色々と分かんないだけど、特に三つ目」
神はため息をついてこっちに戻って来た。
そして、一つ一つを説明してくれた。
「仕方ないな、我は放浪の神である。よって色んなとこのに旅に行った。いくつもの山を越えるための『無限スタミナ』。敵と遭遇した時の『殺気』。これでいいか?」
「おい神様!最初の二つは俺だってなんとなくわかるよ。それに一番知りたいのは最後の奴なんです」
「旅河殿、最後のはあまり関わってはいけないので知らなかったことにしてくれないだろうか」
おいおい、神様が俺に頭を下げた!
そこまでヤバイのか最後の奴。
「なんかゴメンね。俺も興味が少しあっただけだからさ。最後のは忘れたことにしとくよ」
さほど嫌な出来事があったんだろう。
「かたじけない。しかし、もしもの時は使ってくれ」
もしもの時か。
それは、死にそうな時に使おうかな。
「さてと、スキルの話をこれぐらいしてもう一つだけいい?女の子を助ける時になるんだけどあの木刀はなんだ?」
手から出てきて驚いたんだよね。
「あれは私の愛用で旅の時にいつも持っている。愛刀だ!」
いやいや、愛刀だと自信満々に行ってくるけどそんな事を聞きたいのではない。
「それはそれとして、何で手から出てきたんだ」
「それは知らない。我々は己の武器を使う時に手から出てくからな」
自慢気に言うなよ。
けど、我々と言うとこは半神半人はみんなそうってことなんだろうか。
《マスター、その考えは正しいと思います》
ガブさんもこう言ってるし、渡辺さんも何かしら武器を持ってるのだろう。
「了解したよ。神様も怪我治してね」
「旅河殿もご無事でいてください」
ご無事に入れるかな俺。
《大丈夫ですよ。これから大変だと思いますがマスターならやり遂げれるはず》
「そうだな。まず、渡辺さんに新しい名前教えてあげないとな」
そう考えるていると眠くなって来た。
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「うう、眩しい」
俺は目を擦って周りを見渡すと渡辺さん家のソファーで寝ていた。
「まさかさっきのは夢だったのか」
だとしたら凄い夢だな。
《いいえ、あれは夢ではありません》
と瞬時に返事が来たのであれは本当だったと確信する。
俺は顔を洗い渡辺さんがいる方に行くとコーヒーとサンドウィッチを出してくれた。
「渡辺さん、あの書類ある?書くこと全部決まったんだ」
そう言うと渡辺さんは書類を出してくれたので残っているとこを書いた。
書き終えると渡辺さんがチェックをし
「これで手続きが完了しました。えーと、旅河さん次に高校について何ですが」
「高校ならどこでもいいよ」
今は高校より妹を探すのを重視したい。
「貴方の妹さんは現在高校一年生のはずです。なので、高校生活を楽しみつつ妹さんを探すのはどうでしょう?」
天才かよ!
俺はそう思って感心しているが、妹のことについてまで『透視』されているのには気付かなかった。
「そうだな、そうするか」
という訳で俺は高校に入ることになった。
手続きは渡辺さんがしてくれている。
なので、俺はガブさんと中学生の内容から勉強することになったのだ。
これにて「二度目までの道」編が終わりました。次から「高校生活」編となりますのでこれからもよろしくお願いします。