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魔女の従者と永劫の契約と  作者: 華月瑞季
二章 白銀の幼女と母親の愛情と
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幕間 『入浴の時間と』

 洞窟から飛行艇に帰ってくると早速、浴室へと向かった。

 というのも、アリアの魔法のお陰で一応、清潔は保てているが、それでも丸一日砂まみれになっていたという事実が、生理的に受け付けない。

 トリシャは空腹感を満たすより、浴室で体を洗う事を優先したのだった。


 浴室へ辿り着くと、当然ながら身に付けている衣類を脱がなくてはならない。


「あ、手伝いましょうか?」


 トリシャが水着の紐に手をかけると、アイリスは慌てて傍まで寄ってくる。


「いいよ。これくらい自分で出来るから。それよりも着替えの準備とか頼めるかな」


「かしこまりました」


 アイリスはそう言うと、湯船にお湯を溜める為に、一足先に浴室へ入る。といっても、その後にタオルや着替えの準備をするので、一旦入っただけに過ぎない。


 紐を解くと、手元を離れた水着は、床へ落ちていく。すると、張りのある胸部と、下腹部が露になる。

 アイリスの魔法のお陰で、炎天下の中に身を投じていたにもかかわらず、日焼けの跡は一切無かった。


「先に入ってるね」


「はい、直ぐに行くので体を流していてください」


 トリシャはアイリスと入れ替わるように浴室の中へ入る。

 久々に入った飛行艇の浴室は、思いのほか狭く感じてしまう。それも、ここ1ヶ月以上に渡って、氷の城の中にある、巨大な浴室を利用していた所為だろう。


 トリシャは椅子に腰掛けると、シャワーのノズルを掴む。そして、蛇口を捻って水を流すと、それがお湯に変わるのを待つのである。

 最初は冷たかった水も、しばらく待つとお湯へと変わる。手の平で適温に変わるまで待った後、トリシャは頭の上からお湯をかけるのであった。

 温かいお湯は心地良く、トリシャは体を洗わずにひたすらお湯を浴び続けた。


「お待たせしました」


 遅れてやって来たアイリスは、トリシャの背に回る。今振り返れば、一糸まとわぬアイリスの姿を目にする事になるだろう。

 トリシャはシャワーノズルから出る水を止めると、アイリスに身を委ねる。


「失礼します」


 アイリスは一声をかけると、洗髪剤をトリシャの髪に馴染ませていく。

 その手つきは、頭を揉みほぐされているみたいに心地良く、数十日ぶりの彼女の献身は羞恥心をかき消していく。

 彼女の手が毛先まで髪の毛全体に及ぶと、泡を取り除く為に、髪の毛をお湯に晒すのであった。

 静寂に包まれた室内には、水の流れる音だけが広がりを見せる。


「続いて、体の方を洗わせて頂きますね」


 そう言うと、アイリスは素手でトリシャの体に触れるのだ。優しく触れる手は、擽ったさを感じず、僅かな羞恥心が生まれるだけであった。

 アイリスによって全身隈無く洗われている間、トリシャは人形の様に微動だにせず固まっていた。

すると突然、アイリスが後ろから抱きついくる。洗い終わったと油断していたトリシャは、心臓が止まる様な思いをするのであった。


「な、何?」


「ご一緒に入浴出来るのが嬉しくて……ダメですか?」


「ダメじゃないけど、恥ずかしいよ」


「ふふ、トリシャの心臓の鼓動、早くなっていますね」


 トリシャの鼓動が早まっているのは、今に始まった事ではない。アイリスが体を素手で洗い始めた時にはもう、心臓の鼓動は早まっていた。


「一緒に浴槽に入るとか言い出さないよね?」


「心配なさらなくても、従者の私が同じ浴槽に入る事はありませんよ」


 トリシャの心配を余所に、アイリスは背中に抱きついたまま笑を零す。彼女の柔らかな肌から、熱を受け続ける限り、トリシャの鼓動が落ち着く事は無いのであった。


「でも、僕はアイリスの主じゃ無いから、気にしないのかなって思って」


「そうですね……でしたら、トリシャが良ければ、ご一緒しても宜しいでしょか?」


 背中に押し付けられた胸部を滑らせると、アイリスは肩から顔を覗き込むように移動させる。

 その滑らかな肌触りは、泡が付いているだけでは説明出来ないほどに快然たる感触だった。


「えっと、あ……」


 思わず視線を逸らすトリシャだったが、彼女の柔肌は逃してくれない。何故なら、その押し付けられた肌は、彼女が体重をかけている証拠だからだ。


「ふふ、冗談です。トリシャが余りに可愛らしかったので意地悪しちゃいました」


 そうやって笑うアイリスの声は弾んでいた。トリシャが彼女の顔を見られずに反応に困っていると、ようやく開放されるのだ。

 背中に空気が触れると、アイリスの体が密着していた部分がより熱く感じられる。


「もう、あまり困らせないでよね」


「すみません。では、泡を流していきますね」


 言葉で謝意を表現するものの、形だけのものでしかない。

 体の泡を流し終えると、トリシャは湯船に体を浸すのだ。そこに、アイリスが入ってくる事は無かった。

 彼女が侵入してくる事を心配していたトリシャだったが、それは杞憂に終わる。


「それでは先にでて着替えの準備をしています。浴槽に浸かるのは、またの機会にお願いしますね」


「え?」


 アイリスは一礼すると、そのまま退室していった。返事をする機会を失ったトリシャは、彼女が消えていった扉を見る事しか出来ない。

 彼女が残した「またの機会」って言葉だけが、トリシャの頭の中で何回も木霊してしまうのだった。


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