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狂気に満ちた紅き眼

 目が覚めると今度はフランの顔が近くにあった

「パチュリー、お兄ちゃんちゃんと起きたよ!」

 起き上がるとフランの後ろにパチュリーが立っていた。手には『良くわかる薬全集』と書かれた本を持っている。

「とりあえずは起きたわね」

「『ちゃんと』と『とりあえず』にはどんな意味が!?」

「そのままの意味よ。貴方が動き回ったおかげで傷口が開いたのよ。しょうがないから遊びで作った薬を投薬したわ」

「遊びで薬を作るってなに!?」

「お兄ちゃんの背中お姉様みたいになってるね」

「へーそうかいそうか・・・背中?」

 朔は背中に手を伸ばすと、何やら奇妙な感覚と奇妙な物があった。

「っふぁ!?」

 首を限界まで右に向ける、そこにはレミリアと同じような翼があった。ただし左にはフランと同じ翼。

「なぁぁぁ!?」

「はい鏡」

 パチュリーが手鏡を朔に向ける。そこには充血したのとは違う、綺麗な真紅の瞳の朔の顔があった。

「何をしたぁぁ!!?」

「吸血鬼の力を一時的に、もしくは一部を人間に植え付けられないかなと思って作ったのよ」

「その結果これ!? 完全に吸血鬼になってるじゃねーか!!」

「大丈夫よ、一時的なものだから、多分」

「ぎゃぁぁぁ!! 妖怪の仲間入りだぁぁぉ!! ・・・ぁぁ」

 がくりと項垂れる朔にフランが言う。

「だ、大丈夫だよ! 何ならここに住めばいいんだし!!」

「・・・なんなんだよ、そもそもどうしてこうなったんだっけ・・・」

 すごく気まずい空気に包まれる、パチュリーとフランがこそこそ言う。

「パチュリー、解毒剤とかないの?」

「あるにはあるんですが試作段階ですし」

「それで良いからお兄ちゃんに飲ませてあげて」

「わ、わかったわ。・・・えーと、一応打ち消す薬とかも作ってるわよ、試作品だけど」

 その台詞に心底嫌そうな声で言う。

「もういいよほんと、そんなの投与されて余計に悪くなっても困るし」

 どんどん落ち込んでいく朔。パチュリーとフランは本気でどうするか話していると、

「これどういう状況?」

「あ、お姉様」

「ちょうど良かったわレミィ、ちょっと」

「どうしたの?」

 今度は三人で部屋の隅で話し合う、その間もどんどん落ち込んでいく朔。

「・・・いや、状況は理解したけど私にどうしろと?」

「いい案がないかなって」

「それは咲夜でいいでしょ・・・咲夜!」

「なんですかお嬢様、・・・あちらの方はどうしてあのように?」

「咲夜、力を貸してちょうだい」

「は、はぁ」

 四人で部屋の隅で話し合う、朔は背中の翼がへんにゃりしている。

「というわけよ」

「しかしこれはもはや我々の領域を超えているかと」

「じゃあ霊夢のとこでも行く?」

「そういたしましょう」

「お兄ちゃん、元気だして」

 フランは朔に呼びかけているがぶつぶつ呟いているだけだ。

「だいたい薬漬けなんてもうこりごりなんだよ試作だの実験だの言ってわけのわからないものぶち込んで・・・え?」

 途端に顔を上げる、ただしその顔は、何かがおかしかった。

「な、にを?薬、そうだ、薬、違う!」

「お、お兄ちゃん?」

「フラン、いえ咲夜! フランを下がらせなさい」

「妹様、こちらへ」

「・・・これ、魔力じゃない」

 ゴギッ! と普段あまり聞かない音が聞こえる

「使命、破壊!蓬莱、賢者、違う、帰る、どこに、家族は、違う!!」

 バキッバキッ! という音と共に床の色が変わっていく、まるで腐ってしまったかのように。

「くか」

 朔の翼が生き物のようにうごめく。

「くかあさわはまわなたなはやはまさあわやはたかやわらかかかかかかかか」

 奇声を発しながら四人の方へ顔を向ける。

 その顔は、

 狂っていた。

「・・・くひ?」

 その瞬間、朔の周りにナイフが現れる。

「咲夜!?」

「は、反射的につい!」

 ナイフは避ける隙間などなく、全てのナイフが朔へと飛んで、

 いかなかった

「・・・止まって、いやこれは・・?」

 ナイフは現れた位置から動いていないように見えた。がよく見るとほんの少しずつ朔の方へと飛んで行っている。

「かかかかき」

 朔が奇声を発すると、ナイフが突然崩れ落ちた。まるで長く放置された結果腐ってしまったかのように。

「パチェ!・・・パ」

 チェ、とレミリアが最後まで言えることはなかった。なぜなら身体を動かすことができなくなったからだ。

 正確に言えば極端に動きが遅くなっているのだ。他の三人も同じようで少しずつ少しずつ身体が動いている。

「レーヴァテイン」

 朔が言うと右手に杖のようなレーザーが現れる。

(まずい、手加減無しのレーヴァテインを貰うと咲夜とパチェは!)

「くかかかきくけ」

 狂った少年は一切の躊躇なく、その力を振るった。

「ほいっと」

 というこの場に合わない気楽の言葉と共に、ザクッ、と何かが切れた音と共に朔の腹から刀の刃が出てきた。

「くか?」

「寝てろ」

 刃は頭へと登り、朔を真っ二つにする。真っ二つになった身体はその場に倒れこむ。

「やーれやれ、吸血鬼化とショックを与えられただけで不安定になるか。紫のやつ真面目にやったんだろうなおい」

 その手に血の付いた刀を持った男は何でもないかのように言う。

「あ、お、お兄ちゃん?」

「なんだフランドール、まさか人の死体を見たことないわけではないだろ?だって普段から食べてるんだから。・・あぁそうかお前調理されたのしか見たことないのか」

 男は同情や哀れみのような視線をフランに向けて言う。その間にレミリアが割って入る。

「貴方誰!?どうやってここに入りこんだの!?」

「恩人にその言い草はねーだろレミリア。あと入り込むのなんて簡単だ。っとその前に」

 男は真っ二つになった朔の死体をくっつけ、隣に刀を置く。

「じゃあな紅魔館の諸君、さようなら〜」

「咲夜!」

「はい!」

 咲夜が走ると同時に世界が白黒になる、しかし。

「すまんが『時の流れ』は俺にとって意味はない」

 男は普通に動いていて、世界に色が戻る。

(強制的に戻された?)

「今度こそさようなら〜」

 男の足元が突然開く。それは幻想郷の力ある者は一度は見たことのあるもの、スキマだ。

「・・スキマ妖怪か」

「お姉様、お兄ちゃんの身体が!」

 真っ二つになった朔の身体は、何事もなかったかのように綺麗にくっついていた。

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