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「おおおおおお!!」

 朔は迫り来る火柱を左右に裂いて通り抜ける。後ろで爆炎が生じ、何も抵抗出来ずに吹き飛ばされてしまう。

「くっそ!」

 立ち上がろうとしたところに迫るのは炎の弾幕。避ける隙間が一切ない弾幕はもはや壁だ。

 爆発。砲弾か何かのように爆風で吹き飛んでいく。

「がああああああっっっ!!!」

 痛みを感じながらも止まることは許されない。今度は炎で出来た大量の剣が空から降ってきた。

(全部防がなくていい! 致命傷になりそうな物を弾き飛ばす!)

「らああああああああ!!!」

 二本の刀を使って剣を弾き飛ばす。数本ほどの剣が手足を切り裂いた。

 傷口から血は流れない。代わりに白い光のような物が傷口から溢れていた。

(これは一体なんだ? 生命力が漏れてますとかいう話じゃないだろうな!?)

 轟ッ‼︎ という音と共に人の形をした色が違う炎が五体飛んできた。

「くそっ!!」

 そのうちの一体の炎に向かって右の刀を叩きつける。炎はまるで硬い石のように刀を弾き、朔の首元を狙って手刀を繰り出してくる。



 その光景を、彼女は歯を食いしばって見ていた。



「だああああ!!!」

 左の刀を使って手刀を受け止め、勢いを利用して一気に離れる。

それを狙っていたかのように別の炎が回し蹴りを放とうとしていた。勢いは止められない。

「んの!!!」

 無理やり右腕を動かして回し蹴りから身体を護ろうとする。

 バキバキ‼︎ という骨の悲鳴と共に朔は砲弾の球のように吹き飛ばされた。

「ご・・ふぉ!」

(くそ、骨がやられた感じがしたぞ・・・血はなくても骨はあるのか、もしくは別物か・・・)

 考える時間はない。即座に立ち上がらなければやられる。

(く・・・、そが。動けねぇ・・・・)

 殺される。いや消されるが正しいか?

 そんなことを思いつつ衝撃を待った。

 だが、いつまで立っても衝撃はやってこない。

「・・・?」

 ギチギチと壊れかけの人形のように首を動かす。

 六つの炎はそこにいた。だが何か話し合っているように見える。

 朔には、その話し合いは誰が自分を排除するために残るのかを決めているように見えた。

「・・・・・・・・・・・」

 急に力が戻った。

 ダンッ! とわざと音を出して勢いよく立ち上がる。

 炎たちが気づいて動き出した。その光景を見ながら朔は笑う。

 笑うだけの余裕があるように見せかけるために。

(何かが起きてる。もしかしたら外で誰かが戦ってるかもな)

 改めて炎を見る。六色の色は、どれも見たことのある色だった。

(修羅炎は青紫、天界炎は白、地獄炎は橙、餓鬼炎は空、人間炎は黄、畜生炎は赤、魔界炎は黒。・・・今ない色は黄色、それが本体、メインの人格か?)

 人の形をした炎は爆発し、炎が朔に向かって津波の如くやってきた。

(メインが危険だが、俺がいるから下手に手助けにいけないのか)

 刀を強く握り締める。

(・・・やることは、変わらないな)

「おおおおおおおお!!!!」

 自身の力を振り絞るべく、朔は吼える。二本の刀を握り締め、炎の津波へと突っ込んで行く。



 その光景を、彼女は武器を持ってない両手を握り締めながら見ていた。



「喰らいやがれ!」

 魔理沙の放った極太のレーザーを、男は直前で回避した。

 ゴッ‼︎ と何もない空間を光が走った。

 男が避けた空間に置いてあったかのように大量のナイフが現れた。男はそれらのナイフを全て黄色の剣で弾き飛ばす。

「天照大御神!」

「のわっ!?」

 ゴワッ! と荒れ果てた大地に全てを白に染めるほどの光が現れた。

 だが、

「無知な奴め」

 スッ、と莫大な光があっという間に消え去った。

「月と太陽は交わることはないというのに、月の大地で天照の力が使えると思ったか」

「そ、それくらい知ってるわよ。知ってたけど一応試しただけよ」

 霊夢はそんなことを言う。その場にいる三人は霊夢が完全にど忘れしていたことに気づいたが。

(さてどうするかな?こっちの攻撃がまるで効かないじゃないか)

 最初は優勢だと思われたが、蓋を開けてみれば霊夢達の方が劣勢だった。

(この弓の使い方はまだイマイチ掴めてないし、霊夢も普段何もしてないせいで全然上手く神様の力を使えてないし、咲夜のナイフも決定打にはならないな)

「おらおらどうした? 来ないならさっさと帰ったらどうだ?こちとら忙しいんだよ」

「帰るわけないでしょ。私が神社に帰ってゴロゴロするのはあんたをぶちのめしてからよ!」

「・・・それはそれでどうなんだ?」

 男は何だか呆れてしまっているし、霊夢は突っ込んで行く始末だ。咲夜は様子を見ながら隙あらばナイフを投げているが当たりそうにない。

「ったく、あんな魔力どっから出してるんだ?」

 魔理沙みたいな人間では絶対にあり得ない魔力を全身から出しながら男は戦う。どうもあの魔力で肉体の強化をしているらしい。

「・・・・・・・ん?」

 そこで魔理沙はふと気付いた。膨大な魔力の割りには動きが遅いと。

 人間からすれば充分驚異的な速度なのだが、天狗などに比べると遅すぎるのだ。

 更に言えば、魔力も最初に比べて少ない気がした。

(・・・なーるほど)

 ニヤリと魔理沙は笑う。

「よし、やっちまえ霊夢! そいつ弱ってきてるぞ!」

「魔理沙も手を貸しなさいよ‼︎」

「言われなくても手出しするぜ!」

 弓を持ったまま魔理沙は男にもっと近づこうとする。

 その時、男が笑ったような気がした。



「はぁ・・・はぁ・・・っ!!」

 なんとか立とうとする。が手足に力が入らなかった。

 倒れた朔の周りには、六体の炎がいた。

 黒い炎が手を掲げた。そこへと五つの炎が集い、巨大な剣へと変わった。黒い一色の世界でも分かるくらい、真っ黒い剣へと。

(くそ・・! くそ! 動けよおい! まだ止まるわけにはいかねえだろうが!)

 どれだけ力を入れても身体は動かない。それどころかどこかの自分が諦めろと語りかけてきてるように感じた。

(諦めて、たまる・・・っか!)

 この状況で思うのは、とある少女。

(約束とかじゃねえよ。そういう風に思うのがなんでかはどうでもいいよ!だけど、他に思うべきことがあるかもしれなくても・・・)

 ポツリと、朔は呟いた。

「・・・妖夢」



 その名前を、彼女は呼ばれた。

 その瞬間、剣は振り下ろされた。

 彼女では受け止めることは出来ないであろう一撃。

 それを分かっているのに、彼女は動いた。

 その剣を受け止めるべく。

「朔さん!」



 バキバキバキバキバキバキ‼︎‼︎‼︎ と剣の内部から亀裂が走った。

「なっ⁉︎ 内部からの干渉だと⁉︎」

 驚いたのは、朔ではなく黒い炎だった。朔は何となくそうなる気がしていた。

 剣はバラバラに割れ、黒の世界へと消えて行った。

「・・・ありがとな、妖夢」

 朔はそう呟き、静かに起き上がった。身体は怖くなるくらい軽かった。

「なんで・・・なんでだ!?」

 黒い炎は喚く。それを聞きながら、朔は刀を握り締める。

「やめろ、やめてくて!」

 会話などいらなかった。

 やるべきことを、やった。

 二本の刀は、音もなく黒い炎を切り飛ばした。



「そうだよ、それでいい」

 復讐に囚われていたのは一人だけだった。

 他の奴らは、もうどうでもよかったのだ。

 復讐などしたところで、何もならないことなど、ずっと見てきたから。

「楽しいなぁ」

 ナイフが身体を切り刻んだ。お札は動きを阻害するために結界を張った。そして弓が一瞬光った。

「・・・人間は、見ていて楽しい」

 ゴバッ‼︎‼︎ と、全てが白く染まった。

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