激突
「人間炎!」
サタンと名乗った男の周りから爆炎が生じ、朔を空高く放り投げる。爆炎に紛れてサタンが突っ込んできているのがダダ漏れの魔力からわかった。
「わかりやすい!!」
朔は魔力を感じる辺りに向かって刀を一本投げつける。タイミング良く出てきたサタンの顔に桜色の刀が突き刺さった。
「ははっ」
サタンが笑った瞬間、サタンが爆発して朔は炎に包まれる。
「っ!」
肉体を一万倍に加速させて空気を蹴る。
轟ッ! と砲弾のように蹴り出された空気が炎を吹き飛ばす。
「遅え!」
後ろからの斬撃を刀で逸らす。そのまま大きく距離をとって空いた手をかざす。その手に綺麗に収まるように刀が飛んできた。
「遅い遅い! そんな速度で魔王に勝とうなんざ百年早いんだよ!」
言いながらサタンは朔の懐に飛び込んできていた。朔の腹に拳を打ち込むと朔は笑えるくらい吹き飛んだ。
「魔界炎!」
黒の炎を出し、時を止める。そして朔の後ろに回り蹴り落とそうとする。
「効くか馬鹿め!」
時止めを物ともせず朔はサタンを切り裂く。肉を斬る確かな感触があった。
「地獄炎!」
「やばっ!」
男が橙色の炎を纏った瞬間朔は全力で離れる。男は追いかけることをせずその場でニヤニヤしている。
「流石に効かねえか。何でわかったんだ?」
「勘!」
「・・・・いやいやおかしいだろお前」
そうこう言ってるうちにサタンの傷口が綺麗に消え去った。
「じゃあ少し趣向を変えてみるか」
剣を杖か何かのように朔に向ける。剣先を中心に黒い魔法陣が現れる。
「ちょいと技をお借りさせてもらおう。『ダークスパーク』!」
黒い魔法陣が黒く光った。危険を感じた朔は高速で横に飛ぶ。
ゴッッ!! とさっきまで朔がいた所を黒いレーザーが消し飛ばした。
「おおおおお!?」
「この前来た白黒の女が使った魔法なんだが・・・駄目だな俺の趣味じゃない」
サタンは続けて剣先を空へと向ける。
「俺としては広範囲を爆撃する方が好きなんでな!」
空を覆い尽くすように巨大な魔法陣が現れ、間髪入れずに魔法陣から白い剣が大量に落ちてくる。
「ちぃ!」
手を伸ばし、剣を減速させる。無防備になった朔の腹に拳が打ち込まれる。
地面に叩きつけられボールのようにバウンドする朔に、元の速度に戻った剣が飛ぶ。
土煙が舞い、爆発した。
「やっぱ広範囲爆撃はいいねー。簡単にボコボコにできるからな」
月に新たに出来たクレーターの中心で、朔は横たわっていた。
サタンは剣を振り上げる。
「ま、最後は真っ二つということで・・・ばいばい」
空気を裂きながら巨大な剣が振り下ろされた。大地を割り、空間さえ断つ剣は誰にも邪魔されることなく全てを斬る。
はずだった。
バキバキバキバキ! と空間が割れ、そこから出た白刃が巨大な剣を受け止めた。
衝撃波が周りを切り裂く中、朔のいる所のみ無傷だった。
「・・・やるのか? お前みたいな奴が」
空間から出てきた人物に、サタンは言った。
その人物は、静かに笑う。
妖夢は塔の根元に来ていた。その手には白楼剣と楼観剣がある。
「・・・・・・」
妖夢は無言で塔を剣で突こうとする。しかし塔はまるで幻覚のように突いた所を中心に少し霧散するだけだった。
妖夢は少し塔から離れ、刀を構える。
「魂魄流奥義」
楼観剣を右手に持ち、白楼剣を逆手に左手で持つ。白楼剣を上段に、楼観剣を下段に構える
「時壊空殺!」
斬ッ! と確かな感触と共に、空間が切れた。
バキバキバキバキ! と空間が裂け、その先で巨大な黒の剣を振り下ろす男の姿が見え、とっさに受け止める。
「ッ!」
腕がちぎれるんじゃないかと思うような衝撃があった。痛みを堪えながら切り裂いた空間を越える。
超えた先は荒れ果てた大地があった。後ろに目をやると朔がクレーターの中心に横たわっていた。
「・・・やるのか? お前みたいな奴が」
男の言葉に、妖夢は笑って言う。
「半人前でも、やらなければならないことがあります」
白と黒が激突する。
半人半霊の全力と、魔王の心が、荒れ果てた大地を蹂躙した。




