サタン
目を開けると、そこには荒れた大地が広がっていた。ボコボコの小さなものから大きなものまである。
月面だ。ただし地上の人々が想像した、荒れ果てた大地の月面。
「月が本当にこうだったら、どれだけ良かっただろうな」
そんな大地に、男はいた。空色の炎に焼かれた、黒い男が。
朔は男に向かって言う。
「俺もそう思うけどさ、同時に感謝してるんだ。あいつらが俺を改造しなければ、こんないい所に来れなかっただろうからな」
「そうか」
男は乾いた笑みを浮かべる。そこにはあらゆる感情がなかった。
「俺も少しは感謝している。奴らがいなければ俺は・・・・」
空色の炎が消え、男は手を高く高く掲げる。
「・・・こんなにも恨むことは出来なかった!!!」
黒い炎が男から噴き出し、荒れ果てた大地を染め尽くす。
視界が黒に埋め尽くされていく中、朔は男の声を聞いた。
「はははは!!! お前のおかげだ津後森朔!お前があの時折れて消えた心を別の感情で埋め尽くせる事を見せてくれたおかけで!俺はこの高みに辿り着ける!!」
「な、にを・・・」
「我が心の形は全てをひれ伏す剛の剣、その心は世界を焼き尽くす憎悪の焔! あらゆる次元と事象を超え、世界を破壊し尽くせ!!」
黒い炎が収束されていく。飲み込まれそうになるのを堪え、無我夢中で頭に浮かんだ言葉を叫ぶ。
「我が心の形は約束を守りし魂の剣!」
手元に何かが集まるのを感じる。
「我が愛する世界を護る為に、その力を振るえ!!」
ゴウッ!! と二つの力が集った。一つはどこまでも黒く巨大な剣。もう一つは儚く美しい桜と同じ色をした刀、それが二本。
「二本、ね。面白いなお前」
男が笑みを浮かべているが、そこに感情は込められていなかった。
「さあ来い人間。我が名はサタン! 世界を壊す者なり!!」
黒が突撃してくる中、朔は思う。
(さーて、死ぬかもしれないけど・・・)
「約束は守らなきゃな!!」
荒れ果てた大地で、二つの力が衝突した。
「いない」
物置小屋から出て妖夢は呟く。手を握ったまま寝ていたはずなのだがいつの間にか夜になっていて朔もいなくなっていたのだ。
「『俺がここにいるから』なんて言ってたのに・・・」
無意識に握られていた手を握っていた妖夢は頭をブンブンと振るう。
「紫様に連れていかれたのかな? でもこんな時間に?」
そう呟きながら辺りを見渡した妖夢は、ある物を発見した。
妖夢はそちらに向かって飛んでいく。それを見ていた男は、一人笑った。




