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世界の終わり

「んー?」

 男はニヤニヤとしながらこちらに歩いてきている。まるで策があるなら使ってみろよと言うように。

(この武器が、自分の心を相手に見せつけるような武器なら・・・)

 貰い物の刀を両手に持つ。

(この使い方でもいいよな!)

 そして勢いよく、自身の腹を切り、中身を抉り取った。

 グチャリと余り聞きたくない音が腹からした。

「・・・は? 何がしたいんだてめぇは?」

「・・・・こう、したいん、だよ!」

 自身の身体を、二万倍に加速させる。

 音が消え、周りの物が綺麗さっぱり吹き飛んだ。

「地獄炎」

 橙色の炎が男を包み込む。辺りの物が吹き荒れる中、男だけが何もないように立っている。

「なんだ? お前は一体何がしたいんだ?」

 男の呟きは、音の爆弾に飲み込まれ、男の耳にも届くこともない。

 ただ、音に紛れて、男にはこんな呟きが聞こえた、気がした。

「これで良いんだよ」

 その声を認識したのと同時に、男の腹から刀が生えた。

 首を動かして見ると後ろから朔が突き刺したようだ。そのダメージは全て朔へと移っていく。

「不意をつけばいけると思ったのか? 残念だがこの炎に弱点と言えるものなんざないんだ。・・・?」

 言いながら男は何かを感じた。痛みではない。外ではなく、内側から何かがやってきている。

「・・・なあ」

 朔の声が、妙に近くから聞こえる。耳を通さず、脳に直接叩き込まれてるような。

「・・・死に際の心で斬りつけたら、どうなるんだろうな?」

「ま、さかお前・・・っ!?」

 ゆっくりと、だが確実に、男の心が何かにむしばまれていた。それは、今の男とは反対に位置する物だった。

「あ、ああぁぁ!?」

(殺意を見せることができるなら、死に際の心を見せることも、できるよな。明確すぎる『死』を)

 人は、簡単に死ぬことができる。肉体を傷つけることなく、思い込みで死ぬことだって出来るのだ。

 それならば、あまりにも明確な死を見たら、脳は、自分が死ぬのだと錯覚するのではないか?。

(・・・・・そういや忘れてるなー、約束)

 薄れていく意識で、そんなことを思う。

(まぁ、これは仕方のないということで。・・・すまん、妖夢)

 こうして、人として生まれ、改造され、吸血鬼となった少年は死んだ。



「っくく、ふひっ」

 男は笑っていた。面白すぎて、笑いが止まらなかった。

「ひゃーっははは! いやーそれは思いつかなかったわ! 自爆特攻ができるなんてな!」

 腹にあった刀はいつの間にか消えていて、少年の死体が転がっていた。躊躇遠慮なく、死体を踏む。

「いやー、おしいおしいおしかったなー。普通ならそれで俺を殺せたんだろーがな、悪りいが俺達を殺すことは出来ねえんだよ」

 ぐちゃぐちゃと潰れていく音がする。その音がたまらなく好きだった。

「知らないだろうから教えてやるよ。あのくそ科学者はな、一つの魂に一つの特殊な力しか宿せないなら、幾つもの魂を一つの肉体に詰め込めばいいなんて言ってんだ。それが俺、いや俺達だ。一つの魂に一つの炎を宿した多重人格者だったわけだ」

 聞いてるとは思ってない。これはただの独り言だ。

「残念だったな。お前がやったことは無駄だったんだよ」

 修羅炎で肉体を強化して死体を蹴り飛ばす。砲弾のように死体が飛び、あまりの速度に死体はバラバラになって宙を舞いながらどこかへ消えた。

「・・・さてと」

 軽やかに、それでいて一瞬で吸血鬼の元へ移動する。

「そろそろ遊ばせてもらおうか吸血鬼?ひゃーっははは!」

 暴虐の嵐が、幻想郷を覆った。



 その光景を、八雲紫は見ていた。

 彼女がいる場所は、黒の世界だ。紫の存在以外には何もない、空白の世界。

 紫は自身が愛する地が荒らされていく光景を静かに見ていた。その顔からは、いかなる感情を読み取ることは出来ない。

「やっぱり馴れないか?」

 男の声が響いた。いつの間にか紫の側には翠色の蛇がいた。

 紫は蛇に視線を向けることなく喋る。

「馴れることなんてあるわけないでしょ。何十何百と繰り返そうと、ここが大切な物であることに、変わりはないのだから」

 この世界は、盤上だ。神の遊びで世界は作られ、神の気持ち一つで消えていく儚き世界。

 そして紫は、そのことを許容するつもりは、ない。

「・・・次が、早めに来るといいな」

 蛇か消え、また一人になる。

 彼女は見ている、愛する地の最後を。世界の終わりを。

 全てを見続け、少しでも情報を見逃すことなく、次に繋げられるように。

「・・・次があるのなら、いつまで待っていても構わないわよ」

 八雲紫は独り、最期を見届ける。

 一人、孤独に。

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