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魔法使い(盗人)

「〜〜〜♪」

「春ですよー」

 大きな畑を一人で耕す少年がいた。黒のジャージを着て頭の麦わら帽子から白い髪が出ていて、刀を帯刀している。

「春ですよー」

 少年が刀を渡されてから一週間経とうとしていた、周りの桜はもうすぐ満開になろうとしている、

「春ですよー」

 刀はなんとなく持ってるだけで使う気は少年にはない、ただ危ないものだといけないので稗田家を訪れようと少年は考えている。

「春ですよー」

「・・・・」

 静かにくわを振るう。

「春で・・・」

「やかましいわ! 桜見たら誰でもわ、か」

 春告精の春告コールに耐えきれず少年が振り返ると、


 そこには畑の作物をとろうとしている少女がいた。


「・・・・・」

「・・・・・」

 少女はリボンのついた黒い三角帽を着用し、黒系の服に白いエプロンという服装。左手に箒を持ち、右手に人参を持っている。

 しばしの静寂、妖精でさえ黙った沈黙を破ったのは少女のほうだった。

「か、」

「か?」

「・・・借りてくぜ!」

 と言って少女は箒に跨り飛び去ろうとするが、

「させるかコラァ!!」

 少年は刀を帯から引き抜き鞘ごと少女に投げつける。

 刀は弧を描いて綺麗に少女に当たり、少女は地面に落ちる。少年は少女が立ち上がる前に少女の顔の隣の地面に鍬を突き立てる。

「た、たんま! 文明人らしく話し合いで解決しよう! な!?」

「・・・ふん」

 少年は鍬を持ち上げ落ちた刀を拾い上げ、抜刀して刃を少女に向ける。

「ま、まあ待て、まず私の言い分を聞いてほしい」

「・・・」

 少年は刀の刃を少女に向け睨みつける、少しでも妙な動きをしたら斬る、と眼は語っている。

「ここにはさ、たくさん野菜があるだろ?つまりだ」

「つまり?」

「・・・少しくらい持っていっても変わらないだろ?」

「そうかじゃあお前の綺麗な髪の毛たくさんあるから引っこ抜いても問題ないな!!」

「わー! やめろひっぱるな!」

 ギャーギャーそうやってしばらく騒いでいると、

 くぅーーー、と何やら可愛らしい腹の音が聞こえてくる。

「「・・・・・」」

 またの沈黙、少女の顔は羞恥で赤くなり、少年はどういった反応をすればいいのかわからない、という顔をしている。

 しばらくして今度は少年が沈黙を破った。

「・・・何か食う?」

「・・・食べる」



「ご馳走様!」

「お粗末様」

 少年は少女を家へと連れて行きご飯を作って食べさせてあげた。よほどお腹が空いていたのかおかわりも要求していた。

「いやー助かったぜ、ここ最近食べられるキノコがないし霊夢や香霖のとこ行くのもあれだったからな」

「いや、だからって人の物盗もうとすんな」

「盗んでないぜ、借りてるだけだ」

「無断で借りるのは盗むのと一緒」

 少年は少女から皿を受け取り水に浸けておく。少女は畳の座布団に座りこちらへと向き直る。

「私は霧雨魔理沙、よろしくな」

「ん? ・・・ああよろしく霧雨」

「呼び捨てなら魔理沙でいいぜ」

「・・・そうかい、じゃあよろしく魔理沙」

「よろしくな! ・・・えっと」

津後森つごもりさく、一応そういう名前だ」

「そうか、よろしくな朔」

 魔理沙と名乗った少女が手を出してくる。握手ということだろう。朔はその手を掴み握手を交わす。

「・・・はー」

「どうした?」

 魔理沙は何が面白いのか朔の手を強く握ったり軽く握ったりしている。

「男の手ってこんな硬いもんなのか」

「は?」

 ほえー、と言いながら魔理沙は手を触り続ける。いや男の手くらい握ったことあるだろ、と朔は思っているのだが一応好きにやらせておく。

 しばらくして魔理沙はようやく手を解放してくれた。

「さて、飯のお礼をしないとな」

「いらんいらん、大したのは作ってねーし」

「私は借りは返す主義だぜ」

 盗人が何を言うか、と朔は思うのだが言わないでおく。

「なんでもいいぜ。私は何でも屋だからな、妖怪退治から水道管の掃除までなんでもだ」

「・・・じゃあこれ何かわかるか?」

 と言って朔は刀を魔理沙に渡す。

「さっき私にぶつけたやつか、これがどうかしたのか?」

「妖怪に渡された。危ない物なのか?」

「・・・うーん、特に妙なところは感じないな、危険な物ではないと思うぜ」

「本当か?」

「あぁ、危ない物はほとんどわかりやすく力があるからな」

 と言いながら刀を鞘から引き抜き触ったり時々魔法で何かをしている。

「・・・だめだな、パチュリーにでも聞きに行った方がいいかもしれん」

「パチュリー?」

「朔も来てくれ、私じゃ気づかないこともあいつなら気づくかもしれん」

 言いながら魔理沙が外に出るので朔も一緒に出る。

「ほら、タダで乗せてやるからありがたく思え」

「おお空を飛べるのか」

 魔理沙が箒に跨り少しテンションが上がっている朔がその後ろに乗る。

「じゃあ思いっきり飛ぶからな」

「おおよ。・・・・ん?」

 そういえば、どこに掴まればいいんだ?

 という疑問を口に出す前に、箒は急加速して、

「わあああぁぁぁぁぁっっっっ!!」

 情けない悲鳴と共に空へと飛んだ。

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