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「・・・頭隠して耳隠さず」

「っ!?」

 廊下の奥にあったうさ耳が引っ込む。それを見て朔は溜息を吐く。

 あの後、朔は永遠亭に運び込まれていた。永琳曰く、入院するのも普通じゃ考えられないのに更に怪我するとかもっとない。とか。

 もっともその怪我は薬によって傷一つ無くなったのだが。

「・・・・・・」

 また微妙にうさ耳が見え始めている。

 永琳から聞いたのだが、鈴仙はあの場で速攻で逃げ出し自室に篭っていたらしい。朔がいる位置は永琳が扉をぶち破って鈴仙に問いただしたとも。

 正直朔からすればあの殺気を当てられて動けた事を褒めたいくらいなのだが、どうも鈴仙は罪悪感からか朔と顔を合わせにくいようだ。

 でも何か話があるのかさっきからずっとうさ耳がはみ出している。

 朔はもう一度溜息を吐いてから歩き出す。その後ろをうさ耳が距離を保って付いてくる。

 廊下の角を曲がり、そこで待機する。向こうから小さな足音が聞こえ、朔の目の前にうさ耳が現れた。

 それを掴み取り、引っ張り出す。

「わわっ!」

「さーすがに長い。話したいことあるならさっさと言えよ。後に回すと余計言いづらいから」

 うさ耳を離して鈴仙の顔を見て言う。その際に紅い瞳を見てしまい視界が赤くなるがそんなのはどうでも良かった。

「え、えーと、あのね。その」

「・・・言わないならこっちが言いたいこと言わせてもらうぞ」

「え? え、はい」

 鈴仙の顔には怯えのような感情があったが、構わず言ってやる。

「お前良くあの中逃げれたな」

「う、・・・はい?」

「いやあのとんでもない殺気の中動けるとはお前凄いよなしかも永琳が言うにはそれでもこの中じゃ弱いらしいしてかそれだと永琳は化け物なのかねいや案外幻想郷では化け物は普通の気がするしそもそも半人前とか言われてる奴でさえとんでもさんだしそいつら人間じゃないからと言われたらそれまでだけど人間でもあいつら十分化け物クラスだし本当幻想郷の中で・・・」

「・・・怒らないの?」

 何かに怯えてるようで、どこか救いを求めてるように見える顔をした女の子に、朔は嘘を混ぜる事なく言ってやる。

「なにを? 逃げた云々ならそもそもお前は無関係だったんだからそれについて咎めるのはおかしな話だろ?」

「で、でも私が逃げなければ・・・」

「怪我人、いや死人一名追加だろうそれ。あいつ殺すだけじゃなくて痛めつけるためだったから俺生きてるわけだし。鈴仙の実力は良くは知らないけど殺す気で来られたら少なくとも近くにいる俺が死んだ。結果論かもしれないけどあれで良かったし俺も鈴仙も生きてる。それで充分」

 それでも納得いかないのか鈴仙は何だか苦しそうな顔をしている。朔はそういう顔を見るのは嫌いだった。

「まあそれでも気にするならお詫びに接吻でもお願いしよ・・」

「するわけないでしょうが! ・・・ああもう貴方帰っていいわよ師匠は許可出したから!」

「へいへーい・・・そうだ、次の新月はいつだ?」

 ほんのり赤くなった鈴仙(怒りだろうと朔は思う)に朔は聞く。

「明日! それがなに!?」

「おお怖い怖い。じゃあな鈴仙」

 無駄に長い廊下を歩いていく。後ろで何だか叫び声みたいなのが聞こえた気がしたが無視しておいた。



「・・・学習能力ないなー、俺」

 朔は竹林を歩いていた。どこに行けば里に着くのかはまったく知らなかった。

 しかもさっきから視線を凄い感じていた。明らかに妖怪に狙われている。

 とはいえ少し前ならともかく今の朔はそこらの妖怪相手にやられるなんて思っていない。昨夜流れてきた情報には自身の持つ能力の使い方も入っていた。

 もっとも出来るのは逃げるくらいだろう。本来の用途には使えない。

「・・・きたかー」

 朔に向かって大量のカラフルな球が飛んできた。朔は弾幕に向かって左手を向ける。

 すると弾幕の動きが随分とゆったりとしたものになる。

 続いて地面の石ころを右手で拾い上げ、弾幕の発射された辺りに向かって投げつける。

「いたっ!」

「ダァァシュ!」

 怯んだ隙に能力を使用した全力ダッシュをする。

 能力の使い方がわかったからって身体はただの人間。魔法も使えないし武器も物騒な物しかない。こんな状態で戦おうとは思わない。

「あ、ちょっと待ちなさいそこのご飯てかはや⁉︎」

 後ろから声が聞こえて来たが、待てと言われて待つ馬鹿はいない。



 朔が持つ、いや持たされた能力は『加速と減速』を出来る程度でしかない。

 草木に使えば腐敗が加速し、時間を極限まで減速させれば時間の進みは止まっているのと同じになる

 肉体に使えば動きは速くなる。ただし、戻す事は無理なので適当に腐らせたりしても戻せないし、肉体に使うと速くはなるが動かすのは身体なので使いすぎると栄養失調になりかねない、そんな使えない能力。

 他にももう一つあった気がするのだが、朔はどんな物かを知らなかった。

 そんな感じに自身の能力を見直していると、目の前に兎が現れた。

 兎は罠に引っかかったらしく、足がトラバサミに挟み込まれている。

 兎は朔を見つけると罠を置いた人間だと思ったのか更に暴れだす。その程度で外れる物ではないが。

「・・・・・狼とかに襲われてるならともかく」

 呟きながら兎に近づき、罠から外してやる。

「人が仕掛けた物なら人が解いても問題ないだろ」

 仕掛けた人からすれば死活問題なのだが、そこは気にしないでおく。

「ほらさっさと行け。次会う時は兎肉かもしれんぞ」

 兎は少しこちらをじーと見ていたが、やがてぴょんぴょこ跳ねて何処かに行った。

 やれやれと思いながら歩くこと数分、あっさりと竹林を抜け出すことができた。

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