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スカウト

「やー、今日は助かったよありがと」

「どういたしまして」

 あの後家に帰った頃にはもう夕方になっていた。夜になる前には何とか帰ることができた二人、その間ずっと朔は妖夢を引っ張っていた。

(結局お悩み相談とかしてないけど、まぁいいかな)

「いいわけないでしょ」

 朔の背後に紫が音もなく現れた。朔に驚きの顔はない。

「紫さん、普通に入れないんですか?」

「無理なのよ」

 即答だった。はーとため息をつく。

「紫様、どうしたのですか?」

「お届け物よ、幽々子からの」

「幽々子様から?」

 紫はパンッと手を叩いて音を鳴らす。それを合図に何着も服が床から出てくる。

「数日分の着替えと、あとこれ妖夢の生活費」

 と言って朔に渡した金額は、一ヶ月は食べれるくらいの金額だった。妖夢はよくわかっていないようだが朔はもう嫌な予感しかしなかった。

「えーと紫様、これはどういう・・・」

「・・・泊まり込み? マジで?」

「本気と書いてマジ」

 ここで妖夢が気付く。

「え、ともしかしなくても」

「貴方が、魂魄妖夢が、泊まり込み」

「「・・・・・」」

「何驚いてるの、幽々子は一日なんて一言も言ってないわよ?」

 クスクスと紫は笑う。朔はその紫の手を掴んで問答無用で外に連れ出す。

「どうしたの朔」

「貴方たちは何を考えてるんですか!? 女の子を男の家に預けるとか!? 常識はどこに投げ捨てたんですか!?」

「まあまあ、大丈夫よ」

「何を言っとるんすか!? 何を持って大丈夫と言うんですか!? いや別に手を出す気はないですが何が起こるなんてわからないんですよ!!?」

 ギャーギャー紫に言うが紫は全部聞き流している。そして朔が気づいた時には、紫は消えていた。



 布団なんて一人暮らしの朔の家には一つしかない、そして妖夢は随分真面目な性格のようだ、一つしかないと知ったら間違いなく、

「それでは畳で寝させてもらいます」

 とか言いかねない。流石にそれは申し訳ないので別のところで寝ると言って外に出ている朔。行き先は物置の小屋。

「・・・随分と空が明るいことで」

 夜の世界を満月でもないのに明るい月が照らしていた。桜の花びらが舞う。

「あら、ちょうど起きてたのね」

 声が上から聞こえる。見上げるとそこには翼を生やした女の子、レミリアがいた。

「・・・えーと、なんで来た?」

「別に血を吸いに来たわけじゃないわよ」

 言いながらレミリアは朔の前に降り立ち、朔を眼を見て言う。

「少しばかり話があって来たのよ」

「・・・なに?」

「・・・貴方、紅魔館に来ない?」

「・・・・・・・どういった意味で?」

「言い方を変えるならスカウトね」

 と言って朔の腰から鞘ごと刀を引き抜く。何の装飾もない、ただの刀。

「貴方が紅魔館で寝てた時に色々刀を調べ直してみたのよ、貴方が咲夜を何故斬れなかったのかを」

 鞘から引き抜く。刀は月光の光に照らされる。

「結果から言えば結局わからないのよ。私たちがこの刀を使っても普通の刀だし、私自身を斬っても普通に切れるのよ」

 レミリアが刀を振るう。しかし何も起きない。

「だから、私たちは刀は力を引き出すための物であると判断した。つまりは咲夜が斬れなかったのは貴方の力なのよ」

 刀を鞘に戻し、朔の腰に戻す。

「その力が何なのか、それを私たちは知りたい。知った上で有効に使いたいの、誰かに取られる前に」

 ふわりとレミリアは浮き、朔と目線を合わせる。

「貴方は何を望む? それを交換条件として、紅魔館に来てくれないかしら?」

 朔は少し考えるような素振りを見せる。そして。

「・・・・・・はぁ、ちょっと勘違いが過ぎるな」

 大きくため息をついた。

「・・・?」

「言ってなかったか?これを渡された時のこと」

 腰の刀を引き抜き、レミリアに渡す。

「それを渡した奴は、自分の牙だと言った。そいつが何者かは知らんが、斬れる斬れないは間違いなくそいつの力だ。使える人が限られてるのかも知れんが。とにかく俺にそんな大層な力なんてない、ただの人間だ」

 刀を持たしたまま、朔は小屋に向かう。

「好きに調べろ。俺は今のままで満足してるから、妙な力を持った刀はいらない」

 レミリアは何かを言いかけて、やめた。静かに刀を持って飛び去った。

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