幽人の庭師
「すっげー久々に帰ってきた気分だー」
里からそれなりに距離がある畑に、朔は戻ってきていた。のだが畑から作物が少し減っている。
「あー、作物がなくなってるのは妖精の仕業だな、うんきっとそうだ」
頭にはとある白黒の魔法使いが盗んでいく想像が容易にできたが流石に失礼だと朔は思う。
「あー、多分一日ぶりの太陽の光は身体にくるなー。春なのにじわじわくる」
そう言う朔の眼は真っ赤に染まっているのだが、朔はそのことを知らなかった。
と、そこでいきなり地面に穴が空き、朔は落ちる。
「紫さん?」
スキマを超えた先には誰もいなかった。目の前には森とよくわからない匂いが漂うだけだ。
「お?」
だが耳はある音を捉えた、周りを見渡すとそこには香霖堂と書かれた看板がある和風の一軒家を見つける。そしてその近くには。
「・・・・夢か」
現実逃避したくなるほど大量の妖怪や妖精が桜の木の下で宴会をしていた。紫が笑顔で手招きしているがそんな中に人が入れるわけがないのだ。
「あれ? おーいなんだお前も来てたのか!」
盗人と書いて魔法使いと読む人間なら混じっているが。隣には紅白の巫女服がいるがそっちは博麗の巫女だろう。
そんなことを朔は考えながら少しづつ後退してたがスキマが開き無理矢理近くに連れて来られた。
「いらっしゃい朔」
「・・・紫さん、なんですかこれ? 何で俺はこんな妖怪の宴会に連れて来られたんですか?」
「人間だっているわよ・・・三人プラスアルファで」
「プラスアルファってどういうことですか!?」
言いながら朔は一応周りを確認するのだが、そもそも一般人は妖力だの魔力だのはないので意味はなかった。代わりに知っている顔を発見する。
「あら、貴方が来てるなんてね」
レミリアだ、大きな日傘を手に持っている。向こうもこちらに気づいて近づいてくるのだが朔にとってはその隣にいる咲夜がナイフを投げてこないかが気になって仕方ない。そこで紫が耳打ちしてくる。
「何が相手でも危なかったら助けるから安心しなさい」
その言葉で肩の力が抜け、普通に喋ることができた。
「はいどうもレミリア。血はあちらの白黒が良いと思われます」
「別に血を採りにきたわけじゃないわよ」
言いながらレミリアは顔を近づけてくる。朔が顔を逸らさないように片手でしっかり顔を掴みながら。
他人から見ればレミリアがいきなりキスしようとしてるように見えたのだが。
(なに? なんなの!? とりに来たわけじゃないとか言いながら顔をしっかり掴んで逃げれないようにしてるよこの吸血鬼! 紫さんは何で楽しそうなの今命の危機なんですけどー!!?)
本人からすればまた首に噛みつかれるようにしか思えてなかった。
「・・・日の光には気をつけなさい」
と呟いてようやく解放する。
「いやいやマジでなに!?」
「咲夜、今日は帰るわよ」
「無視! 意味がわからん!」
朔の叫びに答えることなくレミリアと咲夜は帰っていく。
「・・・『日の光に気をつけなさい』って、吸血鬼か何かか俺は」
やれやれと言いながら紫の方に向くと、なぜか少女が朔に刀を突き立てていた。
白色の髪をボブカットにし、黒いリボンを付けている。白いシャツに青緑色のベストとスカートを着ている。側には白くて大きな幽霊がいた。
「えーと、何? 今度は何!?」
「・・・せいっ!」
「ふおおぉぉぉ!?」
少女がいきなり刀を振るい、朔はそれを紙一重で避ける。
「なんで!? 最近の俺は何かに取り憑かれてないか!?」
「はぁっ!」
上から振り下ろされた刀を、今度は刀を引き抜き受け止めると、少女はそのまま後ろに跳んで距離を取る。
周りの妖怪は面白そうに見ている。
「妖夢〜、負けちゃ駄目だからね〜」
「幽々子、妖夢が負けたらどうする?」
「売り飛ばしちゃいましょうか?」
「幽々子様!?」
妖夢と呼ばれた少女は悲痛な叫びを上げる。紫と幽々子と言われた女性の二人はクスクス笑っている。
「あ、紫さん本気の目だ」
「幽々子様も本気で言ってらっしゃる・・。これは本気で負けられませんね」
言いながら妖夢は刀を横に振るい、それを朔は刀で受け止める。がそのまま押し込められそうになる。体格を見ると朔の方が明らかに力がありそうなのだが、妖怪に人の常識なんか通用しない。
「うぉ、馬鹿力め」
朔は刀を使って滑らせるように刀を受け流し、隙のできた妖夢に斬り込む。
「甘い!」
妖夢は危なげなく避け、もう一度距離を取る。対して朔は刀を振り上げ、
「そぉい!」
妖夢に向かって放り投げた。刀は弧を描きながら妖夢に向かっていく。
「っとと」
妖夢は刀を弾き飛ばし朔に向かっていこうとする。しかしその場に朔はいなかった。
「あれ? どこに・・・」
キョロキョロと周りを見るがいるのは面白そうに見ている妖怪妖精だけだ。不思議そうな顔をする妖夢の後ろから、腕が出てきて妖夢を持ち上げる。
「おわ!?」
「農民なめんなぁぁぁ!!」
持ち上げた状態からくるくると朔が回転すると、必然的に妖夢も一緒に回転する。
「わぁぁぁ!? そんな攻撃ってありなんですか!?」
妖夢は幽々子と紫に向かって訴えるが。
「ありよ」
「ありね」
「「「ありで」」」
満場一致でありだった。
「何の勝負か全く知らんが降参言うまで回し続けたる!!」
「わぁぁぁ!! 降参でいいです! だから降ろしてください吐きそう!!」
「俺も吐きそう!」
朔は妖夢を離したあとその場に倒れこんだ。
妖夢は刀を杖にしていて、どちらも顔が凄いことになっている。
「・・・紫さーん」
「はいはいゆかりんでーす♪」
「説明を」
「暇だったから♪」
「・・・・」
朔はそのまま動かなくなった、単純に動くのも嫌になっただけだ。
「幽々子様、負けてしまいました」
「(負けって言っていいのかしら? ・・・いいか)そうね、妖夢負けちゃったものね」
「はい・・」
「それも素人に」
「はい・・・素人? 幽々子様さっき彼は凄い剣の使い手だと・・」
「やーね妖夢、簡単に騙されちゃって。それに相手の力量くらい見れなきゃ駄目よ」
「う・・」
「まだまだ半人前ねー」
朔の中で幽々子は紫と同じ部類になった、ようするに厄介人だ。
「紫さーん、もう帰っていいですか?」
「はいはーいお帰りはこちらのスキマでーす♪」
地面に穴が空き、紫がそこに転がすように朔を押し込む。朔が穴に落ちた後、穴は消えた。




