アクシデント
スゴーく久しぶりです。すみません……
『──つまりあの人まぁくんの元彼ってこと?』
驚きと嫌悪の表情を浮かべながら先生はそう言った。そんな先生の顔に、薄々覚悟はしていたがショックを受け、俺がうなだれながらも頷くと、先生は「そっか」と言ってそれ以降口を閉じてしまった。
沈黙のまま気まずい食事は終わり、最後に車で先生を家に送ろうとしたがタクシーで帰ると断られた。それも凄いショックだった。
俺は1人寂しく車に乗ると家に向かって車を出した。
「まいったなぁ……」
思っていたよりもダメージを受けた。
あんなのほほんとした馬鹿作家なら、俺がいなきゃ何もできない生活能力皆無な人なら、俺をいい年してまぁくんって呼ぶ清水先生なら、もしかしたら笑って受け入れてくれるかもって思った。
まさかこんな形でゲイだと知られてしまうなんて。
先生のあの表情を思い出すと胸がキュッと痛んで目が熱くなった。
もうやだ、これから仕事どうすればいいの。
******
涙で視界は滲みつつも無事、家にはたどり着いた。
鬱々としながら駐車場に車を止めて部屋に向かう。
「真也!」
部屋の前にはあいつ。あ、そうだ。こいつがいたんだ。
「辰己……」
こいつのせいで俺、先生に嫌われたんだって考えたらムカついたけど、よく考えたら嫌われたのはこいつのせいじゃない。俺がゲイなのはもともとだし。
だけど先生にバレたのはこいつのせい。
「待ってたんだよ。部屋入れてくれるだろ?」
「お前なんか死ね!」
「お、おいおいなんだよ。お前が家に来いって──」
お前なんか二度と家にあげてやるもんか。どうせ俺が大事に冷やしといたプレモル飲む気だろ。
くそ、お前のせいで…! お前なんかプレモル飲む資格ないんだ!
「真也お前…泣いてるのか?」
「うるせぇ! ど、どっかいけよもう…」
「真也……」
「こ、っちくんな! 帰れよっ!」
もうお前となんか話すことはないんだ。
ちくしょー、全くしょうがないなお前はみたいな目してやがる。この勘違い野郎め。
「もうお前と話すことない! お前とは終わりっ!」
「真也、どうして泣いてるんだ? 一緒にいた男にフラれでもしたか?」
「ウザイ! 帰れ!」
ニヤニヤしながら聞いてくるあいつ。なんかこっちに寄ってくるし。
本当にむかつく。お陰でまた先生のあの顔思い出した。
「フラれてなんか…」
いない。そう言おうとしたけど、あれ? また目が熱くなった。
別に先生に惚れてたわけじゃないのに。どうしてあんなに悲しかったんだろう。
「そ~か、やっぱりなぁ!」
泣き出した俺を見てあいつはすっごく嬉しそうな顔した。 うぜぇ!
「真也ぁ、俺が慰めてやろうかぁ?」
「いらねぇよ! 帰れ!」
「強がんなよ、こういう時は誰かにそばにいてほしいだろ?」
お前にはいてほしくないけどな。
あぁ、もうやだ。なんかすっごい下品な笑み浮かべながらこっちに近づくあいつが見える。
あっ、て思った時は腰に手が回って引き寄せられてた。
「ほら…顔あげろよ」
「いや。離せアホ!」
なに言ってんのこいつ。
この状況に、俺はやっと少し頭がシャキッとし密着したあいつの足を蹴る。
「ばっ、強がんなよ!」
「嫌がってんだよ! 離せよ!」
「いてっ、いてっ! つぅ………」
思いきり脛を蹴ってやるとめっちゃ痛いのか、目に涙を浮かばせてた。ざまぁ!
「ほら、これ以上痛い思いしたくなかったら離せよ。ほら、ほら」
「ぐっ! そ、れでも、真也が家にいれるまで離さない!」
「はああ!? わっ、お前馬鹿やめろ!」
意地なのかあいつはさらに俺をきつく抱き締めてきて、ぐぐぐっと顔を近づけてきた。
慌てて俺は手であいつの顔を押さえるけど、あいつの方が体格いいから押されぎみ。
「やめろ! あっちょっ! ひぃぃ!」
今度は尻に手が回ってきた。両手はこいつの顔押さえるので一杯だし、どうしよう。気持ち悪い。