帝さん遅刻です!
私の私の彼氏様。本日は一時間半ぐらい前から待ち合わせ場所で待っています。でも待ち合わせの時間から三十分。一向に来る気配がありません。
「お客様、コーヒーのおかわりは?」
ずっと待っているカフェの中。店員にこう話しかけられるのは三度目。私はそれを断り伝票を持ってレジに歩いて行った。
流石に二時間以上この店にいるのは悪いと思ったからだ。
さらに店の向かい側の洋服店で三十分。もう家に帰ろうかなって思った頃に青いつなぎを着た男性が走ってきた。はっきりといってデートに対して前向きな格好ではないことは分かる。
まぁ、私も普段とそう変わらないので人のこと言えないか。いや、しかし髪型だって一つにまとめて幼さを無くさせたりいろいろと工夫して居るんだからもうちょっと考えてほしいな。
「ごめん。急な仕事が入っちゃって!」
急な仕事ってなんなんだろうね。いや、でも服装からしたら仕事帰りじゃないんだよな。
「ブルカラーがどうかしたんです? 私の彼はホワイトカラーの仕事ですよ」
私の帝さんは事務職員のはずです。工場職員のような格好をして何が仕事ですか。一体いつから仕事を変えたんです。少しくらい私に相談して欲しいです。
「げっ! そんなふうに見える? デートって感じじゃないよね」
アハハと申し訳なさそうに笑う。
「どこ行きますか?」
デートプランなんて私が練る必要なんて無いので何も考えてませんよ。第一、誘ってきたのはあちらなんですがね……。
「実はさ、映画の予約してたんだけど時間が過ぎました……」
うん。一時間も遅刻すればそうなるよね。きっと、朝一で席とってきたんだろうけど。
「それで、ちょっと遠出することになったんだけど」
「帝さん、それで本当は何していたんです? しっかりと休みが取れる職場ですよね」
今さっき思い出したけど彼の休みに合わせてこっちは勉強しているんだよね。でも、彼氏は自分の仕事とは別のことをしていて遅れたと。いったい、何していたんですかって遠回しに聞いてみる。
「いやぁ。……ごめんなさい」
質問の意図はわかっているけど答えたくないようだな……。
「分かりました。まずはその格好からどうにかしましょう」
「いや、格好はこのままでいいから! とりあえず出かけるから!」
ため息混じりにつぶやいていたがそれを無視して手を取り駅の方へと進んでいった。こういう帝さんって初めてだな。さて、どこに行くのだろうかな~。