彼氏と彼女
いつも仲良し三人組。そう思われているかもしれない。本当はお兄ちゃんをアイツに盗られたくないってだけでベッタリとくっついている私と普通に仲のいい小学生が二人。それだけの存在。
そして、お兄ちゃんはやっぱりアイツにいろいろ奪われていく。どうして分からないのだろう。彼女も三回も奪われたくせに。だから、アイツに彼女も何もお兄ちゃんから奪わせないために私はアイツの彼女になった。
「帝さーん!」
彼氏の名前。なんかよそよそしいけど最近やっと名前で呼ばせて貰えるようになったところだった。大体、とあるアイドルと同じ名前だからって彼女に呼ばせますかね……。
「道瑠ちゃん、どうしたの?」
職場への彼女登場で驚いている様子の帝さん。可愛くない。なんで、冷静なんだろう。まぁ、ここに来た理由は簡単にお弁当を届けに来ただけなんだけど。
「もうすぐお昼だと思ってお弁当を届けに来たんです。
帝さんが私の用意したお弁当を持って行ってくれないからいけないじゃないですか」
プンプンと起こってみる。なんて三文芝居っぽいのだろう。はぁ。まったくいつになったら私はこんなのをやめるんだろう。
「ありがとう……それじゃ、一緒にお昼にしようか」
少し気まずそうに顔を歪ませていた。あぁ、この顔がいいんだよね。この人の人生すべてを壊してやりたいから。
「先輩いいなー」
隣の席に座っていたスーツ姿なのに髪の毛の色素が軽く抜けた感じの人が私をじっと見てくる。なんていうか、公務員には絶対向かない人だよなって思った。
「彼女見つければいいでしょ」
「あはは、それ冗談ですか? まぁ、先輩の彼女みたいな人なら俺の好みかもね」
私が好みとかありえないんですけど……私、お兄ちゃん意外好きになりませんから。
「ごめんね。気に触ること言っちゃって。
先輩も彼女を困らせちゃいけないでしょ」
「なんだか、彼氏の俺より道瑠ちゃんのこと知っているような気になってるの?」
うわぁ、彼氏っぽいっというか帝さん真面目に彼氏っぽくしてくださいよ~。
それは私が彼女ぽくしなくちゃいけないか。
「帝さん行きましょうよ」
腕をわざとらしく引っ張る。まぁ、こうでもしないとお昼時間終わっちゃうからね。
「わかったよ」
そう言って彼と一緒にお昼を食べに行った。
さて、後何年ぐらいこんなことが続くのかな。